元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ>第20回 デロイトトーマツコンサルティング(下)

2002/11/18 16:04

週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載

情報システム子会社を買収

 デロイトトーマツコンサルティング(以下デロイト)は、ERP(基幹業務システム)のアウトソーシング(運用受託)に積極的に取り組む。

 昨年10月、同社はブラザー工業の情報システム子会社だった「ブラザーシステムズ」を約15億円で買収。社名を「デロイトシステムズ中部」に変更し、ブラザー工業向けのERPアウトソーシングを始めた。5年契約で、その後は2年ずつ契約を更新する。

 ブラザー工業は、この時点で15億円のコスト削減を達成。一方、デロイトは、デロイトシステムズ中部を足がかりとして、ブラザー工業以外からの受注を増やすことで収益を得る。

 アウトソーシング進展の背景には、ERPのパッケージ化が進んだことがある。受注する側は、SAPならSAPのERPパッケージを基盤として、複数の企業から定型的な基幹業務を受注しやすくなり、一方、利用する企業側は、パッケージによる一定レベルのサービスが得やすくなる。

 例えば、SAPのERPパッケージを操作する専門家が10人いたとする。この10人を専属で抱える場合と、同じ10人を他社とシェア(折半)する場合とでは、ERPの維持費が格段に違ってくる。

 デロイトの加藤亮プリンシパルは、「一流の専門家を複数の企業でシェアすることで、サービスレベルを落とすことなく、コストを抑えられる」と考える。

 アウトソーシングで要点となるのは、「サービスレベル」の設定である。デロイトでは、伊藤忠商事と監査法人トーマツと提携し、昨年6月からIT保険連動型システム監査サービスを始めた。契約時のサービスレベルを維持できるかどうかを事前に監査することで、保険の料率を適正化するのが狙い。

 EPRアウトソーシングを受託するとき、通常は、万が一、サービスレベルの維持できなかった場合のために保険をかける。

 もし、受託側のリスクを適正に監査する仕組みがなければ、保険料率が異常に高くなり、ビジネスの障害になる。同監査サービスは、これを防止するための仕組みだ。

 加藤プリンシパルは、「現段階では、国内における基幹業務のアウトソーシング化が中心だが、環境が整えば、海外への外注化も視野に入れる」と話す。

 近い将来、インドや中国に開設したERPアウトソーシングセンターを、複数の企業でシェアするのが一般化することも十分にあり得る。(安藤章司)
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