これまで説明してきたように、IT投資減税の対象ハードウェアは、あくまでも「電子計算機」が中心である。租税特別措置法の「電子計算機」の定義に合わない場合は、一般にコンピュータと呼ばれるハードウェアであっても減税の対象にはならない。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

 たとえば、「シンクライアント」というクライアント端末がある。サーバーと接続したネットワーク内で使用し、利用するソフトウェアやデータはすべてサーバーにアクセスしながら利用する端末だ。パソコンのように外部記憶装置を持たず、また、メモリやCPUも比較的低性能の製品で賄うことができる。このため、端末が低価格で、ネットワーク管理が容易なシステムを組むことができるのが大きな特徴だ。今回は、シンクライアントでシステムを組んだ場合のモデルケースを紹介し、シンクライアントシステムにおける減税の捉え方を紹介していく。

 今回の例では、端末の数は42台である。ライセンスの必要なソフトは端末の台数だけ購入する。

 では、端末で利用するアプリケーションソフトを42台の許諾で購入し、そのソフトは、「サーバーから個々の端末に読み込んで利用するマスターが置かれているだけ」というものであった場合、42単位と考えて少額資産の判定ができるのであろうか(通常の場合は42個の機械の中にソフトがあるので42単位となる)。

 インストールされているソフトは、実際は1本であり(形態的には1契約が1単位になっている)、これが技術的に何台の端末でもメモリにロードして利用できるため、42という本数は単に「契約上の同時使用可能許諾数」に過ぎない。したがって、42単位として少額資産の判定ができるかは、微妙な問題になる。

 そのソフトが、「42台の端末で個々に作動するランタイムソフト」として提供され、シンクライアントであるために端末への読み込みの仕方のみが異なるのか、それとも、ソフトのマスターは1つで、複写して使うシンクライアント固有の構造に適合させて開発されたものか、によって判断が異なるであろう。

 「通常1単位」で利用されるソフトであれば、シンクライアントでの利用も端末ごとに1単位として判定できる可能性もある。

 今回のケースでは、パソコンではそれぞれに記憶装置を持ち、サーバーなしのシステムも組むことが可能なので、このモデルケースでは、サーバーはシステムの中に組んでいない。

 シンクライアントは、電子計算機の要件基準である「メモリ256MB以上」を満たさないので、減税の対象はソフトのみとなり、税額控除であれば22万2000円(中小企業の場合のみ)となる。一方、パソコンはメモリ「256MB以上」の要件を満たしており、ハードも減税の対象となる。税額控除額は、66万6900円となる(税金は100円未満切り捨て)。すると、減税控除後の投資額は、シンクライアントが589万3000円。パソコンが610万7700円となり、減税前の約66万円の差が約21万円に縮まる。こうなると、減税を組み込んだ後の観点から考えた場合、約21万円の差ならパソコンでシステムを組んだ方が良いという判断もできるのかもしれない。

 減税はこのように、企業の意思決定を変える可能性もあるのである。