視点

健康管理におけるプライバシー保護

2003/11/24 16:41

週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載

 病歴を把握する診断カルテは、現在それぞれ治療を受けた病院に保管されている。大手の病院を除いて、一般の病医院では紙ベースのカルテ管理が多数派である。厚生労働省の指導や補助金政策で、近年一般の病医院におけるカルテの電子化が普及し始めた。現在、専門性の高い病院では、既に初診受けを縮小している。原則として、一般病医院での診療の結果によって専門的な治療が必要と判断された場合に、紹介を書いてもらい、カルテをもって専門病院での診療を受けることになる。このような診療形態を前提とすると、診断カルテや検査情報を上手に共用することが大切になる。

 一方、個人の診療情報が電子化され、ネットワーク媒体でやり取りされることで、プライバシー保護に関しては十分な配慮が必要となる。とくに、従来の情報管理では、医師が情報管理の責任を果たすことで安全性を確保していたが、今後はより進んだ電子的、組織的なセキュリティの仕組みが構築されなければならない。予防医療の分野でも、健診データのデータベース化とこのデータを利用した生活習慣改善指導サービスが活性化している。今後の予防分野では、医療機関が前面に立つのではなく、一般市中で販売される民間の個人向け検査サービスが中核となる可能性が高い。この場合、検査結果は個人に通知されるが、医療をはじめとするいくつかの専門サービスが連携されている必要がある。

 ここにおいて、一般病医院は、病症診断にとどまらず健常時状態の把握を含めた個人向け主治医、生活指導者的な機能をあわせて果たすことが期待される。このようにプライベートな身体情報を共有するメリットを最大限に活用するためにも、電子的な情報利用に関して、適切な基準の作成を避けて通れない。データベースセンターの管理基準やネット認証基準は当然のこと、各医師や個人にICカードをもってもらい、指紋認証によって情報作成や閲覧を行えるような個人認証までの基準が必要であろう。このような、プライバシー情報管理のバックボーンをしっかりと構築することで、個人にもメリットのある情報の統合化が可能となる。電子化が医療分野の効率化にとどまることなく、個人の健康維持に有用な各種サービスのインフラとなることが望まれる。
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