WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第180回 富士通、北米販社を統合

2003/12/01 16:04

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

 富士通は、米アムダール、英ICLなど海外有力ベンダーを傘下に収めながら、これまで海外事業は長らく赤字を続けていた。しかしICL買収から13年経て、2003年9月に英富士通サービシズ(旧ICL)は英政府から電子政府システムを9億3000万ポンド(1800億円)で獲注し、勢いをつけてきた。富士通は北米でも事業拡大のため、旧アムダールを母体とする「富士通テクノロジーソリューションズ」と、パソコン販社「富士通PCコーポレーション」を10月に統合し、「富士通コンピュータ・システムズ(FCS)」を設立した。

受注生産体制で事業拡大

 FCSは北米に140社の販売チャネルをもつが、同社は卸売りを介さず、直接販社へ販売する方法で、BTO(ビルドtoオーダー)で注文仕様に対応する。FCSのトシオ・モロハシ社長は、「卸売りをバイパスすることで、パソコンもサーバーもBTO方式が採用でき、販社からは高く評価されている」と語る。合併前両社の03年3月期売上合計は約36億ドル(3900億円)であったが、統合したFCSはデスクトップには注力せず、軽量が特徴の携帯端末としてのノートパソコンと、ハイエンドサーバーを主力商品とする。

 FCSはハイエンドサーバーでは、「サンSolaris UNIXサーバー、インテルItaniumのサーバーに加え、AMD Opteronベースを併行的に取り扱い、これらサーバーにもBTOによる販社指定仕様による組み立てを行う」と説明する。

 北米ではデスクトップはホワイトボックスとデルでシェア60%近くを握るため、利益確保が難しいからだ。特にFCSが歓迎するチャネルパートナーは大型サーバーを中核とする付加価値の大きなバリューアデッド主体の大規模販社だ。アムダール時代には、ボーイング、シティグループなど超大企業が同社メインフレームユーザーでもあったため、FCS要員はエンタープライズシステムの経験が豊かで、米アナリストの1人は、「同社のエンタープライズへの提案力はヒューレットパッカード(HP)やサンの直販力を上回る」と高く評価する。

 FCSパートナーである「アメリカコンプシステムズ」のルイ・ロドリゲス社長は、FCSについて次のようにいう。「ハイエンドサーバーまでBTOでリセーラに対応できるベンダーは少いので、チャネルにとってFCSは貴重な存在だ。多くのFCSチャネルはサンのSolarisサーバーを扱っているが、サンの業績が悪いことを懸念している。しかしFCS及び親会社富士通のサポートでサン業績安定も期待している」

 米国エンタープライズ市場では、IBMが独り勝ち体制を固めつつあり、HPもサンもこのIBMの勢いに押されている。従って海外ベンダーである富士通が米エンタープライズで大きく伸びるには数多くの課題がある。富士通がSparc、Solarisサーバーで売上高を伸ばせば、当然サンユーザーを浸食することになり、サンにとっては歓迎できない事態だ。(中野英嗣●文)

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