視点

ITベンチャーを育てるには

2004/04/12 16:41

週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載

 日本経済の再生には、ベンチャー企業を育てるのが有効な方策の1つであることは、誰もがよく分かっているのだが、実はそれがそれほど簡単なことではないことも分かっている。日本でベンチャーが育たない背景には多くの要因が考えられるが、その1つにアントレプレナーを志す人材の少ないことが挙げられる。創業資金の確保が難しいのも、ベンチャー不毛の原因である。昨年、経済産業省の最低資本金規制特例ができて、1円の資本金でも会社が設立できるようになったので、資本金に対する壁はなくなった。だが、運転資金の障壁は依然として残っている。

 国や自治体にはベンチャーを支援する補助金制度がある。しかし、そのほとんどが半額補助であるから、ある程度の手元資金は必要になる。それを融資に頼る手もあるが、融資は返済が必要だからリスクが大きい。期待できるのは、投資会社や投資家からの出資である。ベンチャーの生命は、斬新でとにかく実際に売れるモノやサービスなどの「商品」である。情報技術(IT)の応用分野では、他の業種に比べてこの商品を生み出しやすい。なぜなら、コンピュータや通信回線の低廉化が進み、少ない設備投資で起業が可能だからである。ITベンチャーに期待が集まるのは当然といえる。

 ITベンチャーといえども運転資金の確保が課題であり、できれば出資に頼りたいと考える。しかし、出資側に自分の商品の価値や将来性を理解してもらうのは一般に容易ではない。これはベンチャー側の説明能力にも問題があると思われるが、出資側にIT分野の“目利き”が少ないことも問題である。ITベンチャー振興のためには、志の高いアントレプレナーの育成が必須であるが、IT分野がよく分かる優れた目利きを育てるのも重要である。アントレプレナーの資質については種々指摘されているが、出資側の目利きについてはそのような議論はあまりないようなので、最後にひと言、私見を述べておきたい。

 目利きには、情報を求める行動力、徹底して人の話を聞くコミュニケーション能力、先入観をもたない柔軟な思考力などが要求される。また、この人になら信頼して自分のアイデアや構想のすべてを話してしまおうと思えるような豊かな人間性も欲しい。その上で、ベンチャーを育てるというよりは、アントレプレナーを育てるという視点をもってもらいたい。そんな投資家に出会いたいものである。
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