テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>41.情報システム調達

2004/05/24 16:18

週刊BCN 2004年05月24日vol.1040掲載

 情報システムの政府調達の動きが活発化してきた。極端な安値落札をきっかけに、関係府省連絡会議で「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」が了承されたのが約2年前。主要な制度見直しや業務・システム最適化計画(EA)の導入も決まり、新しい政府調達の枠組みもほぼ整った。「今年度からは実際の政府調達で、どこまで実践できるかが勝負」(河野太志・経済産業省商務情報政策局情報処理振興課課長補佐)となってきた。(ジャーナリスト 千葉利宏)

“丸投げ”からの脱却へ

 今年度に入って各府省からレガシー(旧式)システムに関する刷新可能性調査の結果が相次いで公表された。国税庁の国税総合管理(KSK)システム、農林水産省の総合食料局情報管理システムや林野庁改善分散処理システム、財務省の財政融資資金運用事務等システム、警察庁の指紋業務用システムなどの結果が公表済みで、社会保険庁の社会保険オンラインシステムや国土交通省の自動車登録検査業務システム(MOTAS)などの調査作業も進んでいる。これらの結果に基づいて今後情報システムの再構築が図られることになり、行政のBPR(業務改革)を置き去りにしたまま安値受注による囲い込みが行われた3年前と同じ失敗を繰り返すことはもう許されない。

 今年3月末に3回目の改定が行われた「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」には、(1)総合評価落札方式をはじめとする評価方式等の見直し、(2)競争入札参加資格審査制度を始めとする入札参加制度等の見直し、(3)調達管理の適正化──の3つを推進することが明記されている。これまでの2年間に見直し内容を具体化するための施策が順次打ち出され、3月には情報システムの導入にともなうサービスの内容、レベルを確保するためのサービスレベル契約(SLA)の導入ガイドラインも策定された。

 経産省では、今年度から実践モードに入る。(2)の中に含まれている「中小企業者からの調達促進」では、調達対象とする情報システムの選定を進めており、今年度中に実施する予定。(3)で打ち出したEVM(出来高管理)によるプロジェクトマネジメント(PM)手法の導入でも、実際にEVMを適用する案件を選定してモデル事業として取り組むことにしている。

 (3)では複数年にわたるライフサイクルコストの評価に基づく一般競争入札の実施も打ち出されているが、これも今年度から予算執行が複数年度にまたがるパイロット事業をスタートする。「ユーザーが強く、賢くならなければ、ITベンダーも育たない。IT調達はどうあるべきか。電子政府はそのためのテストベッド」(河野課長補佐)という役割も担っている。

 これまでは大手ITベンダーに丸投げ状態だった政府調達を、各府省がどこまで変えることができるだろうか。国税庁のKSKシステムの場合、今回の刷新可能性調査で構成する24業務システムのうち14システムは「現時点でオープンシステム化が適している」と結論づけ、残る10のシステムも引き続きオープン化の可能性について検討を進めていくことになった。また、現在使用しているホストコンピュータも2005年度にリプレースする計画で、その作業を進めるうえでPM業者を導入。従来の一括随意契約から、調達単位を見直すなどによって一般競争入札へと変更していく方針だ。今後は、それぞれの調査結果を踏まえて業務・システム最適化計画が策定され、情報システムの再構築が動き出す。情報システムの政府調達に対する社会的な関心も一段と高まりそうだ。

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