テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>46.e-Japan重点計画-2004(上)

2004/06/28 16:18

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

 今月15日、IT戦略本部は年次計画「e-Japan重点計画-2004」を決定した。目前に迫ってきた「2005年に世界最先端のIT国家となる」との目標に向けて、今回から新たに導入された成果(アウトカム)目標33項目と、それを実現するための具体的な施策370項目が盛り込まれた。05年度までの達成をめざす成果目標が明確に打ち出されたことで、“世界最先端のIT国家”の焦点が絞られ、施策の効果が高まることが期待される。(ジャーナリスト 千葉利宏)

電子政府などの実現がカギ

 e-Japan重点計画(以下、重点計画)の策定は、今回で4度目。最初の重点計画では、IT基本法に書かれた重点政策5分野を対象にインフラ整備を中心に220施策、重点計画-2002では318施策。IT利活用を打ち出したe-Japan戦略IIのあとに策定された重点計画-2003には医、食などの先導的7分野に関する施策が加わり366施策が盛り込まれた。

 重点計画-2004はe-Japan戦略の目標年である05年を目前にして今年2月に策定された加速化パッケージ5分野(表参照)が追加され、施策数はさらに増えた。それらの施策を05年に向けて重点的に展開する「ラスト・プログラム」と、06年以降の布石として取り組む「プレ・プログラム」の大きく2つに整理。ラスト・プログラムには、今年3月に評価専門調査会が公表した最初の中間報告の提言を受けて成果目標33項目が導入されたことで、政策がめざす方向性と全体像が判りやすくなった。「成果目標はIT担当室で原案をつくり、各府省とキャッチボールしながらまとめ、それらを実現するための具体的な施策を出してもらった」(横山隆裕・内閣官房IT担当室主幹)。これまでの重点計画は、各府省から上がってきた施策を並べたとの印象も強かったが、成果目標を導入したことでIT担当室の役割が強化され、重点計画にも芯が通ったと言えるだろう。

 重点計画-2004では、加速化パッケージの5分野を対象に12項目の成果目標を設定したが、2月の加速化パッケージと比較してみても、ポイントがかなり絞り込まれている。例えば、2番目のセキュリティ政策では、コンピュータやインターネットなどITの安全対策と、テロ行為や防災など社会生活の安全対策の大きく2つに分けて成果目標をまとめており、具体的な内容としてはITの方では各府省の情報システムの被害を最小限にするための安全基準の策定、専門的な監査の実施を行うための体制確立の2つ、社会生活の方はICパスポートの導入による出入国管理のセキュリティ向上、防災情報共有システムの整備の2つを掲げるだけに止めている。

 成果目標の中に数値目標を掲げて、より目的が明確化したのが、3番目のコンテンツ政策の推進。知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会が今年4月にまとめた報告書「コンテンツビジネス振興政策」や、5月に策定された年次計画「知的財産推進計画2004」なども踏まえて、産業振興としてコンテンツビジネスの拡大を図っていく姿勢が鮮明になってきた。重点計画-2004で成果目標の数が最も多いのが電子政府・電子自治体に関係するもの。加速化5分野のなかで5項目、さらに次週に紹介する予定の先導的7分野で2項目の計7項目。やはり世界最先端のIT国家となるには、電子政府・電子自治体をいかに実現するかがカギを握っているのは間違いない。

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