拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第15回 システムインテグレータのシティアスコム編(1)

2004/07/19 16:18

週刊BCN 2004年07月19日vol.1048掲載

 福岡市に本社を置くシステムインテグレータのシティアスコムは今年4月、システム全体を一気に置き換える「ビッグバン」により、SAPの大規模向けERP(統合基幹業務システム)「SAP R/3」を導入した。同社がシステム再構築に踏み切った理由は、「旧システムが優れすぎていたからだ」と、ビッグバン導入を陣頭指揮したSAPのパートナーであるユアソフトの小野哲ニ・企画部教育企画主任は振り返る。

アプリケーションが優秀すぎて?弊害が…

 シティアスコムは九州地区の金融機関や中堅企業を中心に情報システムの提案、設計、開発、運用サービスなど、上流から下流まで幅広く提供している。年商は昨年度(2004年3月期)が約77億円。金融、流通・サービス、製造、公共など自社開発アプリケーションを豊富に持つ。

 そのシティアスコムは、自社の基幹業務系も自前で開発してきた。当初は営業管理と収益管理の両システムを導入し、これに商品仕入や外注購買、債権債務、人事・給与などのシステムをアドオン。加えて、業務拡大に伴い経理関連の安価なパッケージソフトを相乗りさせていた。ところが、各システムはバッチ処理で連係を図ったものの、アプリケーションが混在しすぎて統一されているとは言い難い状態に陥ってしまった。この状況を打開するため、シティアスコムは昨年夏に、「R/3を最短納期・最小投資で導入」とうたうユアソフトのR/3導入ソリューション「リアルモデル」に目を付け、システム構築を依頼することになった。

 ユアソフトの小野主任は、シティアスコムからの依頼があった直後にシステムを検証しているが、「同業の我々が、さすが、と唸るほど、シティアスコムのシステムは個々に優れていた」という。しかし、「個々のアプリケーションは複雑で、アドオン開発に手を付けたごく少数の担当者にしか扱えなくなっていた」(小野主任)と、“優秀すぎる”システムの弊害を見たという。シティアスコムのビッグバン導入プロジェクトは昨年11月にスタート。受注側と発注側が両社ともシステムインテグレータということもあり、プロジェクトは異例の方式が取られた。「シティアスコム側から、プロジェクトに関わる担当者を事前に当社でトレーニングして欲しい、との依頼を受けた」(ユアソフトの小野主任)と話す。システム構築の案件では、発注側に対し事前に手の内を明かにすることは少ない。だが、同業者ということで特別の措置を講じた。

 プロジェクトはシティアスコムのシステム担当者3、4人を中心にユアソフトからも小野主任など3人が加わり、トータル約3か月間という短期間でR/3導入を完了した。「収益管理システムなど、特別なアドオン開発があり、若干時間を要した」(ユアソフトの小野主任)が、それがなければ2か月での導入も可能だったという。次号以降では、その点を探ってみる。(谷畑良胤)
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