e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>6.学習コンテンツの流通
2004/10/11 16:18
週刊BCN 2004年10月11日vol.1059掲載

最大の特徴は、コンテンツ配信センターが三鷹市教育センター内に設置・運営されることになった点だ。住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)などをきっかけに、どの自治体でもネットワークセキュリティには一段と神経質になっており、コンテンツ配信が目的であっても、学校が直接、民間業者とネットワーク接続することを問題視する意見は多かった。今回の事業も実施主体はIT関連企業や教材会社など約400社が加盟する社団法人、日本教育工学振興会(JAPET・坂元昂会長=東京工業大学名誉教授)だが、センターを公的機関に設置することで自治体も安心して接続できるというわけだ。
さらに利用方法にも工夫が施された。利用者IDを生徒・児童、教員、教員管理者の3つに分けて、教員IDにはコンテンツの内容を評価できる「お試しモード」、教員管理者IDには実際に購入するかどうかを決める「決済メニュー」が表示される仕組みだ。また、教材などを備品費で購入する場合、ほとんどの自治体が条例で「備品はラベルを貼って管理する」と定めているが、ネットワーク配信されるコンテンツにはラベルを貼ることは不可能。「コンテンツ購入の障害になることが判明して、参加25地域では条例改正などの対応を取った地域もある」(大島克己・三鷹市教育センター所長)と、現場レベルでも利用環境を整えてきた。
評価専門調査会の第2次中間報告では、校務処理の原則100%電子化が考えられることが提言された。三鷹市でも来年度には校務処理を電子化できる環境を整える予定だが、「まだ利用することは決めていない」(大島所長)という。教職員の出勤管理も“はんこ”で行うことが条例などで定められ、現状では電子化しても効率化があまり見込めないからだ。
文科省では、教育の情報化を推進するため「“情報モラル”授業サポートセンター」やJAPETに委託して「“IT授業”実践ナビ」を立ち上げるなど情報提供による支援体制を強化してきた。しかし、ポイントは教育現場がITの活用による学習効果の向上、教材作成や校務処理の負担軽減などメリットを実感できるかどうか。今回のコンテンツ配信事業は最初の導入部分であり、今後の利用状況を見ながらきめ細かな対策が求められることになりそうだ。
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