Special Issue
パートナーと伴走し、新たな価値を共創するネットワールド オンプレミスの知見を生かした「クラウド移行の最適解」
2025/09/18 09:00
週刊BCN 2025年09月15日vol.2075掲載
クラウドの導入は業種や企業規模を問わず進んでおり、近年は基幹システムのクラウド移行に踏み切る企業も増えてきた。オンプレミスのITインフラ製品の取り扱いで実績を積み重ねるとともに、最新のパブリッククラウドにも精通するネットワールドは、豊富な知見を生かしたクラウド移行ソリューションを提供することで、企業のDX実現を支援している。さらなるクラウド需要の高まりをパートナーと共に取り込み、どのようにビジネスを拡大するか。同社でクラウド事業のマーケティングと技術支援を担う4人の担当者に話を聞いた。
オンプレミス版OfficeだとCopilotが使えない?
生成AIへの関心を契機にクラウド移行へ
企業が新たなIT投資を行う際、クラウドの活用は今や当然検討すべき選択肢であり、ITソリューションのディストリビューターであるネットワールドは、クラウドサービスの取り扱いを拡充している。多くの販売パートナーにとっても、クラウドのニーズをどのように取り込み、ビジネスを成長させていくかは重要な経営課題になっているだろう。
AWS Marketplace にて独立系ソフトウェアベンダー(ISV)ソリューションの再販を開始
しかし、IT市場全体を見ると、オンプレミスのハードウェアや買い切り型のソフトウェアライセンスもまだまだ活発に利用されている。ネットワールドでクラウド事業の販売戦略を担うマーケティング本部クラウド推進部の猪原伯光・部長は「特に地域のイベントに出展した際などは、現在もオンプレミスでシステムを利用されているお客様が多いことを実感する」と話す。

クラウド移行が進まない理由として、技術支援を担当する技術本部クラウド基盤技術部2課の武田光晴・次長は「業種や商慣習から、セキュリティ面を気にしてクラウドを利用できないと考えるお客様がまだ多い」ことを挙げる。実際には高い安全性が担保されているサービスでも、運用ポリシー上、データを外部には預けられないというケースは現在も少なくない。

ただ、業務効率化のためにクラウドを有効活用すべきという考え方は徐々に広がりつつある。「医療業界では、厚生労働省、経済産業省および総務省が定めたガイドラインに沿えばクラウド化が可能になった。ガバメントクラウドの流れも加速しており、これまで最も慎重だった政府系機関もクラウド化に動き出している」(武田次長)。そのような中で、オンプレミスの仮想化基盤をクラウドに移行したいという相談も増えているという。
猪原部長によると、「オンプレミス版の『Microsoft Office』を使っているお客様は現在も多いが、最近は生成AIへの関心が高まり、『Copilot』に興味を持たれる場面も増えている。オンプレミス環境ではCopilotは利用できないので、『Copilotを使う前に、まずはOfficeのクラウド移行から始めてみませんか』と提案することが増えている」とのことで、AIを始めとした新しいテクノロジーの普及も、クラウドの導入を後押しする強い追い風になりそうだ。
オンプレミスからクラウドへ システム移行を支援するネットワールドのクラパス
IT業界の中でも、クラウド技術への習熟度は企業によって大きな差がある。そこでネットワールドは、クラウドを活用したシステム提案のハードルを下げるため、21年から「CloudPath Services(クラパス)」と呼ぶサービスを提供している。これは、オンプレミスのITシステムをクラウドに移行する際に直面する技術的課題を解決するために設計された、販売パートナー向けの包括的な技術支援を行うサービス。クラウドインフラの構築や移行をサポートし、ユーザー企業が安定的かつ効率的にクラウドを活用できるよう支援するものだ。
マーケティング本部セールスコンサルティング部クラウドコンサルティング課の福住遊・課長は、「例えば、当社が取り扱う米NetApp(ネットアップ)のストレージをお使いのお客様が、ファイルサーバーを『Amazon Web Services(AWS)』に移行するとなると、『Amazon FSx for NetApp ONTAP』が候補になる。しかし、ネットアップ製品のサポートをしていたパートナーや、ユーザー企業の運用担当者がAWSに詳しいとは限らない。クラウド移行が可能かを検証し、本番環境を問題なく移行するまでのスキルやナレッジを持つ人材はまだまだ多くはないのが実情だ」と話す。
技術本部クラウド基盤技術部の三島淳二・部長も「特にオンプレミスからクラウドへの移行には、従来の知識と新しい技術の両方が必要となる。パートナー各社もクラウドの重要性を認識しているものの、これまでにクラウドへの移行案件を経験する機会が限られていたケースもあり、その場合、技術面でもビジネス面でも不慣れということが少なくなかった」と述べる。そのような中で、クラパスでは、オンプレミスとクラウドの両方を熟知したネットワールドのエンジニアが新規構築や設定、移行などの作業をサポートすることで、クラウドビジネス拡大にあたってのパートナーの不安を解消していると説明した。

ネットワールドは「Microsoft Azure」を中心にクラウドの取り扱いを開始し、クラパスもAzure向けのサービスが先行していたが、24年からはAWS向けにも提供を開始した。特に、オンプレミスの仮想化基盤からクラウドへ(V2C: Virtual to Cloud)、あるいは物理サーバーからクラウドへ(P2C: Physical to Cloud)の移行支援に、多くの引き合いがあるという。AWSの「Application Migration Service」(MGN)や、「Azure Migrate」など、クラウドには標準で優れた移行ツールが搭載されているので、クラパスではこれらのツールの活用ノウハウを伝えることで、アプリケーションを一からつくり直すことなく、コストと期間を抑えながらユーザー企業のクラウド移行を実現していく。
クラウド移行はITインフラの運用・保守の効率化が大きな目的だが、武田次長によると「サポートが終了した『Windows Server 2008』や同『2012』などの環境を、MGNを使って『Amazon EC2』上で稼働させるといったニーズもある」という。セキュリティパッチなどの提供は終了しているが、ある範囲に限定してレガシーなシステムを延命したいという要求に、クラウドを利用して応えることも可能なのだ。
ソフトウェア販売の新しい活路 Marketplaceを最大限活用するには
24年4月から、ネットワールドはAWSのディストリビューションパートナーとして、「CloudNeW(クラニュー) for AWS」の取り扱いを開始した。AWSサービスのリセール、クラウド移行技術サービスを行うのに加え、「AWS Marketplace」を通じたソフトウェア販売やサービス提供のビジネス開発を支援している。猪原部長は、「クラウドサービス事業者が運営するマーケットプレイスを通じたソフトウェア販売が拡大している。また、27年にはマーケットプレイスの市場の半分以上がチャネル経由になるとの予測もある」と述べ、マーケットプレイスでは、クラウドからユーザー企業へ直販の形でソフトウェアが提供されるだけでなく、パートナーの商流を通じた販売が今後拡大すると展望する。
AWS Marketplaceでは、ディストリビューター、チャネルパートナーを経由し、柔軟な条件設定が可能なPrivate Offer(特別な価格提供)でソフトウェアを販売できる仕組みが整っている。マーケットプレイスというと直販・定価販売のイメージが強かったが、現在はユーザー企業はパートナーを通じて特別な価格で購入することが可能だ。福住課長は「お客様の中には、AWSの利用料金の予算をまとめて確保しているケースがあり、その予算枠内でソフトウェアを購入できるというメリットもある」と説明し、調達の柔軟性という点でもAWS Marketplaceには利点があるとした。
さらに、ネットワールドではソフトウェアメーカーに代わって製品の出品・販売ができるAWS Marketplaceの新しいモデル、DSOR(Designated Seller of Record)を活用した再販モデルを25年から導入した。販売パートナー各社は、ネットワールド経由でAWS Marketplaceを通じた再販ビジネスを始めることが可能だ。海外製セキュリティソフトの中には、既に日本における売り上げの一定の割合をMarketplaceが占めているものもあるという。
ネットワールドは今後もクラパスとCloudNeWを柱に、AWSとAzureの両方でパートナーのクラウドビジネスを支援していく。猪原部長は、「マルチクラウド構成を考えるお客様が増える中、私たちはオンプレミスとクラウド、そしてAWSとAzureの両方に精通し、最適なソリューションを導き出せるのが強みだ」と強調し、「クラウド活用でお悩みのパートナーやお客様は、ぜひ私たちを頼っていただきたい」と力を込めた。クラウドの領域における同社の最新の取り組みは、25年11月に開催する「Networld Wiz 2025」でも詳しく紹介される。
- 1
関連記事
トップに聞くビジネス戦略とパートナー支援 パートナーと伴走し、新たな価値を共創するネットワールド
エンタープライズAIの取り組みを加速するリアルタイムAIデータ分析基盤「VAST InsightEngine with NVIDIA」の実力は?
ネットワールドを認定、ディストリビューターとして国内初のAWS Marketplace DSORに