コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>3.コンテンツ自動販売機「デジらく」(3)

2004/11/15 16:18

週刊BCN 2004年11月15日vol.1064掲載

 コンピュータプログラムやデジタルコンテンツは、言うまでもなく、デジタルであるがゆえに劣化しない。だからこそ、ビジネスソフトの使用許諾契約にソフトの中古売買を禁じる条項が設けられ、あるいは、コピーされ中古で売られるCDなどに業界は神経をとがらせる。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 これらの中古品売買が行われるのは、コンテンツそのもの以外、CD盤面やジャケットを含めたパッケージ、つまりメディアに一定の価値があると見られているからだと考えられる。例えばブックオフに至っては、買い取り価格を本の内容ではなく、外装の程度によって決めるという。

 これは、コンテンツホルダーから見ると、バカにされた話とも思うが、形あるモノに価値を見る、これが現実なのかもしれない。

 前回までに紹介したコンテンツ自動販売機「デジらく」は、CDやDVDにコンテンツを書き込むがパッケージはない。ラベル印刷も行わない。もし、中古売買がメディアに価値があるから成り立つのだとすれば、「デジらく」で提供されるコンテンツは中古市場に出回ることはないかも知れない。

 さらに、中古市場は一般的に、新作を早く入手した人が売り、人より遅くてもいいから安く買いたい人が買う。

 このとき、コンテンツホルダーから見た問題は、価値が全く下がらないコンテンツが繰り返し利用されるにも関わらず、売り上げには一切つながらないことだ。

 しかし、もし、パッケージの発売から遅れて「デジらく」を使い、中古を下回る価格で販売したらどうだろうか。市場調査は必要だが、中古市場で取りこぼしていた売り上げを確保する意味で、試してみる価値はあるかも知れない。

 「デジらく」に向くコンテンツは新作だけに限らない。例えば、旧バージョンのビジネスソフトなども考えられる。

 ユーザーのなかには、何らかの理由で旧バージョンを使い続けたい場合がある。しかし、メーカーは、旧バージョンを特別に販売する手間はかけられない。メーカーが売ってくれないという理由で、仕方なく違法コピーを行っているユーザーもいるだろう。

 こうしたミスマッチを防ぎ、旧バージョンからも売り上げがあるようにすれば、メーカーとしても検討する価値はあると思う。販売に際し、在庫は不要なのだから。

 ユーザーが違法コピーをせざるを得ないような環境にしない責務も、メーカーにはあるのではないだろうか。
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