大遊泳時代

<大遊泳時代>第44回 社会変革を創れるか?ITベンチャー

2004/11/15 16:18

週刊BCN 2004年11月15日vol.1064掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 米国西海岸のITベンチャーやベンチャーキャピタル(VC)と大学の産学連携部門を勉強する機会があった。ITバブルのリセッションを乗り越え、ここへきて復活の兆しを見せている。

 こうした熱いダイナミズムに触れると、日本は居眠りというか昼寝をしているのか、と思ってしまう。

 1つに、何といっても1000─2000億円の資金を持った大規模VCの存在が大きい。小さくとも分野を絞った専門のVCも数多いという。やたらに投資家が多いのだ。

 では戦前戦後の日本の投資環境はどうであったのか。不十分ななかにもベンチャーを育てるタニマチはいた。

 2つに、「ベンチャー=中小企業」という日本の図式と異って、ベンチャービジネスは、社会変革を創るものという認識がある。マイクロソフト、ネットスケープ、ヤフー、クアルコムが作った社会変革、デルが作った流通変革は半端ではない。戦前戦後の日本の革新もそうだった。しかし、高度成長でサラリーマン大企業偏重の安全ストーリーが跋扈し過ぎたのか。

 3つに、非常に高い技術がベースで、米国内のみならず、国際的ビジネス展開を視野に入れている点。省みると、昨今の我が国創業のITベンチャーはいささか小粒。まあこれは仕方ないというか、山椒もピリリといきたいところ。

 日本の大学も最近でこそ熱心になってきたが、サンディエゴ大学、スタンフォード大学では、「基礎研究」、「学生教育」、そして「ビジネス創出」の3本が同等のミッション。こうなると筋金入りである。戦後の日本の大学はどうか。

 ねえワトソン君よ!「もっと、日本は日本らしいベンチャー輩出のメカニズム、社会制度が必要だね」。「そうですよ。アメリカの物真似はバブルとMBAブームでコリゴリですよ」。
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