コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>10.中国で活躍する日本の元気企業

2005/01/10 16:18

週刊BCN 2005年01月10日vol.1071掲載

 昨年末、事務所の契約の詰めを行うため上海を訪れた。昨年7月以降の半年で5回、上海を訪問していたが、来年度も上海出張は多くなるかもしれない。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 さて、こうした状況にあって、すでに数年前から中国に進出している元気な企業の話をスタッフが聞いてきた。ACCSの今の活動と共感する点もある。1999年に創業し、3D(3次元)CGソフト「Shade(シェード)」シリーズのエクスツールズを買収し、ビー・エヌ・エヌ新社や最近ではアイフォーを傘下に収めて成長しているイーフロンティア(安藤健一社長)である。

 イーフロンティアの成長速度には目を見張るものがある。その戦略は、ソフトバンクや楽天などネット系の買収戦略に通じるかもしれない。違う点は、買収される側の企業が、成長途上ではなく、むしろ苦境に陥った老舗ブランドが多いことである。

 もともと、同社の創業スタッフには日本アジア投資のスタッフがおり、ベンチャーキャピタルのノウハウを持っていたのが大きかったようだ。

 ある時、カナダ製の3DCGソフトである「Maya」の売り込みをカナダ大使館が行っているのを知り、国を挙げてソフトの海外販売をバックアップする体制にショックを受けたと、安藤社長は言う。

 同社が買収することによって、ユーザーも継続的なバージョンアップやメンテナンスを受けるメリットがある。

 例えば、パソコンでバーチャル熱帯魚を育てるソフト「アクアゾーン」は数十万本の販売実績を持つというが、同社が買収することによって、熱帯魚が死んでも、ユーザーが新しい熱帯魚を入手できるようになった。 良いソフトであれば、アフターケアを整えることでユーザーを増やそうという考え方だ。これは、核となるユーザーから支持される、とても良い考え方だと思う。

 昨年、日本は、知財立国を目標に掲げ様々な施策を実施することになった。それはそれで素晴らしいことなのだが、もともと、ゲームソフトにしてもビジネスソフトにしても、この業界は官に頼らず、逆に官から放任されたところで初期の成長があった。

 このことを思い起こせば、中国を生産拠点と捉えるのではなく、ソフトウェアなら言語の壁を越えられると考え、志を持って海外販売に邁進するイーフロンティアを、私は個人的に応援したい。上海の活気に触れ、元気な会社と一緒に成長したいと、年が明け、思いを新たにしている。
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