大遊泳時代

<大遊泳時代>第57回 スポーツの動体視力よりマネジメントの動体視力

2005/02/21 16:18

週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 先輩から「テニスと卓球の選手に近眼はいない」と教えられ、近眼を治すには風にゆれる葉を眼で追いかけるリーフ運動を勧められた。

 そんな時、私が「生来の運動神経」を主張するのに対し、愛息が野球とテニスは「動体視力」で優劣が決まると言っていたが、最近、話題の本「メジャーリーグvs日本野球」(大村皓一・宝塚造形芸術大学教授著、講談社発行)を見ると、さすが日本のCG(コンピュータグラフィックス)研究第1人者──、マルチメディアで野球を分析しておられ、なぜ「動体視力」かが良く分かる。

 先生いわく、「好守備と好打は共通する」とのこと。フライの落下予測と、飛んでくるボールのヒッティング場所の予測は一緒なのです。即ち「ボールが止まって見える」から好守好打の確率は上がるのです。この能力が「動体視力」らしい。

 これまでテレビや新聞で、解説者もアナウンサーも監督も知ったかぶりの「根性論」、「チームプレー論」の精神論ばかり聞かされて、あげくは「センス」、「勝負度胸」の言葉に聞き飽きてきたので「動体視力」は新鮮であった。スポーツにも、やはりインテリジェンス、サイエンスが入って欲しい。

 大村教授は8年間にわたるCGからの研究をスポーツ科学としてまとめられたそうだが、まさにスポーツ+マルチメディア+ハートで気持ちが良い。

 昨年、IT業界のプロ野球への参入が騒がれたが、この上、+ITとなると野球そのもの、観る人、する人、運営する人、みんながもっと楽しくなるはず。

 たかが「オーナーごとき」人たちも「マネジメント」の動体視力を鍛えてはどうかな。でないとオーナーではなく「追うなー」に過ぎなくなってしまう。

 ねえ、ワトソン君!「ゴルフはボールが止まっているから、動体視力もくそもないのだけどな」。「それはね、心の『動揺視力』というのが弱いのですよ」。
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