ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>6.IT依存度が高い企業ほど関心高い

2005/05/30 16:18

週刊BCN 2005年05月30日vol.1090掲載

 ITILの国内普及団体「itSMFジャパン」の設立メンバーである日立製作所は、オフコンからクライアント/サーバー型、オープンシステムへと移行してきた1990年代に「システムが複雑化・混在化して、ITサービスが今後の関心事になる」(八木隆・ITソリューション部主任技師)と見て、国内で先駆的にITILの研究を開始した。

 03年から日立製作所では、ITILのアセスメントや研修、コンサルティング、運用・保守などのサービスを企業向けに相次ぎ打ち出した。同社のアセスメントを利用して、ITILを適用した独自のシステム運用スタイルを導入した企業は多岐にわたる。

「情報システムの依存度が高い物流、金融などの企業で、当社のサービスが利用されている」(八木部長代理)という。こうした企業は、自社のITIL適用でシステム運用の品質レベルを高めるだけでなく、「アウトソーシングをするベンダーをコントロールする」(同)狙いがあると指摘する。

 米インテルは、社内の情報システム担当者数千人がITIL準拠の認定資格取得を目指し、すべてのシステム運用を自社で賄う方針だ。日本の企業は、インテルなど欧米企業と違い、これだけ多くの自社人員を割き、情報システムを運用する例は少なく、部分的に外部リソースに委託する例が大半だ。こうした点を考えても、運用スタイルが欧米と異なるため、日本型のITILを確立する必要性は高い。

 日立製作所の統合運用管理ソフトウェア「JP1」は、バージョン7i製品群で提供する機能がITILのプロセスに大部分が適用可能だ。しかし、「人間系のプロセスについては、ツールではカバーできない。障害発生時の影響範囲を測定するITILの『構成管理』を明確化したいという企業は多く、当社では部分的にITILのプロセスを適用するサービスも提供している」(八木部長代理)と、企業に対しシステム運用の定量的なデータを収集するところから始め、総合的な支援をしている。

「予期しないダウンタイムの約80%は人とプロセスの問題に起因している。残り20%はテクノロジーが原因」というのは、マイクロソフトの鈴木和典・執行役エンタープライズ・サービス担当だ。同社では、自社製品群を使った運用部分をITILベースにして信頼性を高めようと、ITIL準拠の総合的運用ガイダンス「MOF(マイクロソフト・オペレーションズ・フレームワーク)を確立した。

 ウィンドウズ製品のシステムが停止する原因には、テストミスなど人に起因する部分が少なくない。そこで、MOFでは人、プロセス、テクノロジーの観点から運用管理を規定した。
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