大遊泳時代

<大遊泳時代>第81回 第1次デジタル革命と第2次デジタル革命

2005/08/15 16:18

週刊BCN 2005年08月15日vol.1101掲載

松下電器産業 顧問 前川洋一郎

 6月1日、日本経済新聞「やさしい経済学」で東京大学教授・伊藤元重氏は、「IT革命とデジタル革命は違う」と言っておられる。電機業界では、デジタル革命とIT革命のとらえ方は次の通りではないかと考える。

 デジタル革命は、家電にいくつマイコンを搭載するかから始まって、1980年代は、家電機器の制御に使うHA(ホームオートメーション)、90年代は家庭内の機器をつなぐHII(ホームインフォメーションインフラストラクチャー)となり、00年代は、家の内の機器と外の情報をつなぐeプラットフォーム構想が出てきた。

 一方、カテゴリーとしては、80年代のパソコン、ワープロ、ファクシミリの情報家電、次に90年代DVD、DSC(デジタルスチルカメラ)、デジタルテレビなどのデジタル家電。そして今はインターネットにつながり情報を取り込むITのネット家電と変遷している。

 どうやら概ね、学会でも官庁でも業界でも、「デジタル情報家電」という言葉に落ち着きつつあるが、ことの本質は「デジタル技術化」、「IP化」。もう1つ、顧客にとっての新たな満足「インターネット接続によるメリット」の3つの要素が集まって1人前の大人である。

 ビデオがDVDになった、フィルムカメラがDSCになった、アナログテレビがデジタルテレビになったと言ってもアナログからデジタルへの置き換えであり、これは第1次デジタル革命と言える。やはり、デジタルとネットに加えてサービスが新たに加わり、新市場が生まれて欲しい。

 やはり、ITS─ETC、遠隔医療、音楽配信など──これが第2次デジタル革命、電機業界のIT革命ではないだろうか。置き換えだけでは、積み上げにも進歩にもならない。やはり、「もの(デジタル)+ネット+サービス」の3点セットが必要である。

 ねぇ、ワトソン君、「人間もそうだね。単なる置き換えだけでは、リストラだね」。「そうですよ。付加価値をオンする人を持ってこなくては!」。
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