IT Stock Frontline

ライブドア・ショックの余韻残る 証券取引所の上場審査厳しく

2006/05/01 16:04

週刊BCN 2006年05月01日vol.1136掲載

今年の新規上場、昨年を下回る見通し

 ライブドアが株式市場から退場した。最終取引となった3月13日の株価終値は94円。株式を100分割した直後の2004年1月に9000億円台まで膨らんだ時価総額は約10分の1に縮小して取引を終えた。

 上場廃止となったもののライブドアの株券は紙くずになったわけではない。しかし、企業価値の計算となると困難だ。昨年末時点の1株あたり純資産は189円だが、有価証券報告書虚偽記載が発覚しただけに、バランスシート自体の信頼性が問われる。フジテレビや個人投資家などに対する巨額の損害賠償発生も懸念要因になる。一部の報道によると、「USENが株式交換でライブドアの全株を取得し、完全子会社化する検討に入った」とされるが、仮に実現した場合、株式交換比率がポイントとなる。USENの宇野康秀社長個人がフジテレビから取得した株式(12.7%)の取得価格は1株71円で、ライブドア株主には厳しい交換比率になる可能性がある。

 ライブドア事件によって法制度、取引所の監視体制など問題点が明らかになるとともに、投資家の企業を見る目は厳しくなった。ライブドア・ショック以降、ベンチャー企業が多い新興市場の株価の立ち直りが遅れ、トヨタ、キヤノンといった大企業の株価上昇が目立つのも“安全志向”の投資家心理を反映している。また、証券取引所による新規上場企業の審査が厳しくなったことから、今年の新規上場企業数は昨年を下回る見通し。

 かつてライブドアの堀江前社長は「時価総額で世界一になる」と公言。時価総額増大を図る過程での違法行為が明らかになったことで、時価総額重視の経営そのものを否定する声が一部に出ている。しかし、経営者が企業価値を高める努力を行い、その成果を測るモノサシとして時価総額を重視するのは、企業として正しい道。企業にとって重要なのは、株主の利益が最大になるように努力することだろう。(有賀勝久)
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