未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>79.アイエイエフコンサルティング

2006/06/05 20:43

週刊BCN 2006年06月05日vol.1140掲載

BIツールを無償公開

 アイエイエフコンサルティング(IAFコンサルティング、青野晴成代表取締役社長)はBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの開発を行っているが、メイン事業は企業のBIシステム導入支援のためのコンサルティングサービス。今年度(2006年6月期)の売上高見通し約7億円のすべてをコンサルティングサービスが占める。ソフトウェアを開発しながらも、それ自体の売り上げは1円もない。その理由は、開発したソフトをオープンソースソフトウェア(OSS)として無償公開しているからだ。「ソフトはあくまでコンサルティングを行うためのツールであり、商材ではない」(平井明夫・マーケティング部マーケティングディレクター)というわけだ。

 同社は、山一證券の情報システム子会社に在籍しデータ分析システムなどの開発に携わっていた3人が創業メンバーとなり、98年に設立した。一貫してBIシステムおよびDWH(データウェアハウス)システム構築のためのコンサルティングサービスを手がけており、現在の社員数44人のうち35人がコンサルタントで占める。

 そのIAFがOSSのBIツール「OpenOLAP(オープンオーラップ)」をリリースしたのが04年2月。OSSの配布および共同開発環境サイト「SourceForge.jp」でソースコードを公開しており、1万5000以上のダウンロードがある。情報処理推進機構(IPA)の開発支援のもと、OSSとしてソフトの開発を始めたのは、中堅企業以下にBIシステムの普及を進めるためだった。

 BIシステムは、商用のBIツールを使用した場合、数千万円のコストが必要なため大企業向けの製品。事実、AIFはこれまで100以上のコンサル案件を手がけてきたが、その顧客の大半が大企業だった。従業員1000人以下の中堅企業にもBIを提供するためには、低コストが必須条件としてOSSを提供することを選んだ。

 また、BIは各企業の要望に合わせたカスタマイズ開発が必要で、OSSはカスタマイズが容易な特徴を持つことも、OSSとして配布する決め手となった。

 「オープンオーラップを配布していることで実ビジネスにどれほどの影響があるのか、はっきりと把握できないが、ブランド価値向上や中堅企業が検討してもらいやすくなったのは確か」と平井ディレクターは話す。

 「BIツールをOSSとして配布する日本のソフトメーカーは存在しない」。中堅企業以下の市場でBIシステムの普及に向け、ソフトを無償公開するという戦略で、存在感を示そうとしている。(木村剛士)
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