SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>5.日本システムウエア(上)

2006/06/26 20:37

週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載

まずは既存事業の見直し

低採算案件は取りやめる勇気も

 日本システムウエアの2006年3月期連結決算は売上高308億200万円、営業利益7億3900万円、経常利益7億2400万円、純利益は元社員の不正取引による特別損失の影響により1億5100万円の赤字だった。

 売上総利益率は16.8%、営業利益率は2.4%、経常利益率は2.3%だ。売上総利益率20-30%を稼ぎ出していたのは昔話になってしまった。01年3月期を例に挙げると売上総利益率22.9%、営業利益率8.6%、経常利益率8.3%だった。経常利益率10%に向けて、「まずは01年度の水準に戻すことが課題だ」と中島秀昌社長は言葉に力を込める。

 収益改善に向けて「既存事業の見直し」を挙げる。採算の低い案件については、「やめる勇気も必要」であると断言する。同社は店舗系のシステムを得意としている。大型店舗への導入実績があるポイント制度や電子マネー決済などの複雑化したシステムへの対応など「得意分野を横展開して、採算性を確保していきたい」と今後の展望を語っている。

 既存事業の強みを横展開しながら、利益率の改善を図っていく。そのほか、新規事業として「Arrowfone 事業」「SVI事業」「ストリーミング事業」「LSIターンキー事業」「RFID事業」を育てていく。新規事業は、「事業の柱として確立するまでに2-3年はかかる」が、09年度にはこの分野の売り上げを昨年度の約8倍の75億円に成長させる計画だ。

 かつて高収益を得ていたのは、ITの高度成長期だったことや、携帯電話やデジタル家電に実装する組み込みソフト開発のはしりであったためだ。また、ソフト開発分野でも新しい需要が次から次へと生まれていた。競合他社がビジネスアプリケーションの受注を拡大するのを横目に、組み込みソフト開発に着手したことが奏功していた。

 受託開発という点では同じだが、ビジネスアプリケーションは顧客の注文通りに仕事をしていればよかった。納期が遅れても取り返しがついた。ところが90年代半ば、見積段階から入札制に移行したこともあって、現在は利益率10%を確保するのは厳しい状況にある。

 組み込みソフトは、機能をアドオンしていく仕組みのため、これまでのノウハウの蓄積が競争力を左右する。デジタル家電や携帯電話などは、製品サイクルが早い。ソフトウェアのウエートが高まる半面、新規参入による競争の激化で、「コスト抑制圧力が強まってきた」と肌で感じている。

 「中国も参入するだろうし、海外での開発比率は高くなっていく」とみている。同社が組み込みソフトでの差別化を図っていく要は、ファームウェアの設計を手がけてきたことだ。(つづく)(田沢理恵●取材/文)
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