問題を放置せずに全社で解決

事業部の壁を壊して改革の総仕上げへ

 赤字のままでは、中期経営計画(2004-06年度)で目指した営業利益率8%の達成どころではない──。日本電子計算(JIP)の内池正名社長は、05年6月の就任直後から赤字の原因をひとつずつ潰していく機構改革に乗り出した。

 だが、05年9月に導入した不採算案件を申し出るクリティカルマスエスカレーション制度では「不採算の兆候を申し出たら、叱責されるのではないか」という不安がぬぐいきれない雰囲気が伝わってきた。よくない傾向だった。

 「全社の幹部が知恵を出し合って問題を解決するための議論を行うのであって、“どうしてこうなったのか”という責任追及の議論はしない。すでに問題は発生しているのだから、どう解決するのかが最重要だ」と全社に訴えた。この仕組みなどが機能することによって昨年度(06年3月期)の不採算案件額は半減することになる。

 また、ソフトウェア開発では協力会社への発注が行われるが、これが適切な価格、品質に基づいているのかもゼロから見直した。これまで管理部門が担当していた発注処理を、05年10月から経営戦略部門に移して、協力会社への発注プロセスを改めた。

 「購買・発注は伝票処理のような単なる業務プロセスではない。コストとして外部流失する資金を適切に抑制するのは、プロジェクトを成功させるうえで極めて重要」だと社内にハッパをかけた。

 まずは出血(赤字)を止める作業から着手。その後、購買・発注部門を見直して売上高原価率を押し下げる動きに出た。そして今年4月1日、機構改革の総仕上げとしてメスを入れたのが最上流工程の営業部門だ。

 原則として事業部の壁を撤廃し、営業、開発、運用といった機能別の本部制へと移行。営業は開発部門が算出したコストを前提に粗利を上乗せして顧客へ提示するなど、営業と開発が相互に牽制する仕組みを導入した。

 これまでの事業部制では、「事業部長が腹をくくれば、何でもできた」と、相互牽制が効きにくい構造だったからだ。相互牽制によって、若干のエネルギーロスはあっても「確実に利益を出していくこと」を重視した。

 一方、開発部門には運用プロセスで支障がでないようドキュメントの整備を指示。運用フェーズでトラブルが発生すれば案件が開発部門に逆流して、新規の開発案件の進行に悪影響が出かねないからだ。営業、開発、運用のそれぞれのコンピテンシーを明確化することで着実に前へ進む構えだ。

 今年10月には、09年の株券電子化の特需も織り込んで同じ日本証券金融グループの日本証券代行と持ち株会社方式で経営統合する予定だ。昨年度までの機構改革に加え、今年度は新たに経営統合を実行に移す。こうしたダイナミックな動きを踏まえたうえで、来年度以降の第10次中期経営計画の策定作業を進める。その中身はまだ見えてこないが、機構改革や統合効果を最大限生かしたものになると期待されている。(安藤章司●取材/文)