SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>11.富士通ビー・エス・シー(上)

2006/08/07 20:37

週刊BCN 2006年08月07日vol.1149掲載

社長自ら開発案件をチェック

ソフト開発の原価率約87%に改善

 富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)は組み込みソフト開発事業に強みを持ち、SI事業とパッケージ開発・販売も手がけるSIer。富士通グループからの売り上げが全体の約60%を占める。2000年10月、ジャスダック証券取引所に上場している。

 昨年度(06年3月期)の経常利益率は4.1%。決して高水準とはいえない。だが、03年度の経常利益率は0.6%で、この2年間で3.5ポイントもアップさせた。富士通BSCは03年度、数件の大規模な開発プロジェクトが不採算化、それが主な要因となり、約25億円もの特別損失を計上した。そのため、03年度は利益率が大きく落ち込んだのだ。

 04年6月、厳しい状況のなかでトップに就任した兼子孝夫社長は、開発体制を実際にみて事態を重く受け止め、自ら開発現場に踏み込んで案件管理を担当することを決めた。兼子社長は、SE出身で開発畑が長い。前職の富士通テクノシステムの社長時代は、社長業を務めながら共同通信社の画像配信システムのプロジェクトマネージャーをこなしていたこともあった。それだけに、「自分がやる」という気持ちが強かった。

 毎週月曜日の朝、開発プロジェクトの各責任者と兼子社長は港区台場にある開発拠点「東京開発センター」に集合する。「PA(プロジェクト・アシュアランス)会」と呼ばれる開発プロジェクトの進捗をチェックするミーティングに出席するためだ。兼子社長がPA会で必ず要求する4つの要素がある。(1)実際のソフトウェアの画面図(2)各プログラムの関係図(3)データベースの論理構成図(4)スケジュール表の4つがそれだ。兼子社長は案件ごとに4つの資料に目を通し、開発案件の進捗をチェック、指示を出す。PA会の発足により今では不採算案件は大幅に減少した。

 また、開発環境としては兼子社長の考えでオープンフレームワークの「Topjax(トップジャックス)」を採用した。一部の開発プロジェクトで活用しており、なかには開発期間を従来の2分の1に縮めたケースもある。一連の開発体制の大改革で、ソフト開発およびSI事業部門の原価率は、03年度91.6%だったが、昨年度は86.5%に改善した。「案件次第では、84%に抑えられるケースもある」(兼子社長)ほどだ。

 ただ、SIおよびソフト開発事業は「売り上げも高成長が望めないし、原価率も85%が限界だろう」とみている。では、何で利益を高めようというのか。兼子社長はソフト開発・およびSI事業の原価率を85%まで下げてそれを維持し、パッケージ事業と組み込みソフト開発事業の業績を拡大しようとしている。この2つの事業のほうが成長も見込め、原価率を大幅に下げられる可能性があるからだという。(つづく)(木村剛士●取材/文)
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