SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>12.富士通ビー・エス・シー(下)

2006/08/14 20:37

週刊BCN 2006年08月14日vol.1150掲載

利益ではSI以外の事業が主役

組み込みとパッケージに注力

 不採算案件を発生させた苦い経験を生かし、SI事業で開発効率化、コストを削減する体制を自らが指揮してきた富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)の兼子孝夫社長。ただ、高収益SIerになるための推進力と位置づけているのは、SI事業ではない。売上規模はまだ小さいものの、利益率がよく成長著しい組み込みソフト開発事業とパッケージソフトの開発・販売の2つの事業を兼子社長は利益率向上の主力とみている。

 組み込みソフト開発事業の昨年度(2006年3月期)の売上高は期首予想よりも約8億円プラスの63億円2500万円。03年度に比べ約20億円伸びた。売上構成比率は、03年度が13.9%だったのに対し、昨年度は20%を超えた。携帯電話の高機能化やデジタル家電の普及により、組み込みソフトの需要は大きい。「市場の成長はしばらく続くだろう」と兼子社長はみており、SI事業よりも成長性があると読む。加えて、原価率をSIよりも抑えられ、「83%の低率で開発できる」という。富士通BSCは組み込みソフト開発では中国北京市に置く子会社でオフショア開発を手がけているからだ。海外で開発する場合、「業務アプリよりも組み込みソフトのほうがトラブルが少なく発注しやすい」特性がある。中国のSEには1人/月25万円で開発させており、日本のソフトハウスに下請けに出すより安価。この子会社の組み込みソフト開発人員を早期に90人体制まで増やす計画で、今以上に原価率低減に貢献させる考えだ。

 一方、利益率の高い事業として位置づけているもうひとつのビジネスが、パッケージソフトである。富士通BSCはパッケージソフトの主力製品として情報漏えい対策ソフトの「FENCE(フェンス)」とオンメモリデータベース「Oh-Pa(オーパ) 1/3」を拡販中。両製品の販売額は約11億5000万円と規模は小さいが、販売が伸びれば自然と原価率が下がるのがパッケージソフト。「原価率を60%まで下げられる可能性がある」ことから、パッケージ販売を国内外ともに強化する体制を急いでいる。オーパについては、5月に現地IT企業との提携で、中国で販売する体制を整えた。

 「SIの平均原価率は頑張っても85%が限界」が持論の兼子社長は、売上高の主役はSI事業でも、利益では組み込みソフトとパッケージを主役と位置づける。今年度の経常利益率の見込み数値は4.7%と2ケタ到達にはまだ遠い。

 不採算案件を出さずに、原価率の低い組み込みソフトとパッケージ事業の売り上げをどう伸ばすか。同社の経常利益率10%への道は、両事業を売上面でも主役にすることができるかにかかっている。(木村剛士●取材/文)
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