SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>13.アイティフォー(上)

2006/08/28 20:37

週刊BCN 2006年08月28日vol.1151掲載

高水準の経常利益率を堅持

業種・業務のターゲットを明確化

 アイティフォー(須賀井孝夫社長)は得意業種・業務のターゲットを明確化することによって高水準の経常利益を獲得している。

 2002年度(03年3月期)から3期連続で経常利益率9%台を堅持、昨年度は同10.8%を達成した。今年3月には念願の東証一部上場を果たすなど売上高100億円台の中堅SIer有望株として注目を集めるに至った。

 しかし、ここまでの道のりはけっして平坦ではなかった。

 ハードウェアの低価格化が本格化した90年代は利益率の低迷に苦しんだ。最盛期で年商40億円余りあったネットワーク機器の販売事業はここ10年で半減し、年商20億円ほどあったプリンタ販売も縮小せざる得ない状況に陥った。

 ハードウェアの売り上げが急速に縮小していくなか、得意とする業種・業務のターゲットを明確化しソフトウェアやサービスなど付加価値の高いビジネスへのシフトを急いだ。とはいえ、ハード販売を主体とする時期が比較的長かったこともあり、ソフト・サービスへの転換は容易ではなかった。

 アイティフォーの出身母体である専門商社の高千穂交易から1973年に転籍した須賀井社長は、「70年代のハードウェアは仕入れ値の5-6倍で売れた。ソフトウェアは“付属品”という時代でもあり、切り替え段階では厳しいときもあった」と打ち明ける。

 金融業向けの債権管理システムや流通小売業向け総合システムなど得意業種や特定業務システムの深掘りに力を入れた。

 「競合他社が少なく、付加価値が高い領域にターゲットを絞る“ニッチトップ”を目指し、“オンリーワン”戦略で臨んだ」ことで金融・流通業などの特定業務システムでシェアを伸ばした。

 債権管理を中心とする地方銀行でのシェアは約70%に達し、ユーザー会を結成する規模に成長。2-3社のユーザーが共同して新機能やバージョンアップの費用を捻出し、アイティフォーが受注する動きも活発化した。特定分野のシェアの高さが安定した収益源となったうえ、ユーザーのメリットにもつながったのだ。

 一方で無理な値引き要求には応じないよう心がけた。

 ITがコモディティ化して情報システム部門がさほどしっかりしていない企業でもITを導入するケースが増えた。顧客企業における要求仕様書の策定やソフトウェアの検収能力が全般的に下がっているなかで、安易に値引きに応じると不採算案件のリスクが高まると考えたからだ。

 須賀井社長は、「赤字覚悟で攻める、よほどの戦略案件でない限り、適正粗利を切る受注はしない」ことにこだわった。90年代後半には業種業務ターゲットの明確化と適正粗利を追求する体制がほぼ整い、収益力拡大へと巻き返していくことになる。(つづく)(安藤章司●取材/文)
  • 1