SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>14.アイティフォー(下)

2006/09/04 20:37

週刊BCN 2006年09月04日vol.1152掲載

事業部が連携して需要発掘

相乗効果で部門間の壁をなくす

 アイティフォーは自社が得意とする業種・業務を伸ばすことで適正粗利の確保に努めている。これを組織面から見ると複数の事業部が巧みに連携をとって需要発掘に取り組む様子がうかがえる。

 流通や金融、インターネット通販、CTI(コンピュータと電話の融合)、ネットワークなどの事業部は、普段は個々に営業しているものの、案件が見つかれば即座に結集して相乗効果を発揮する。「全社で連携しやすいビジネスモデルをつくる」(須賀井孝夫社長)ことによって、部門間で意思疎通が滞る“事業部の壁”を極力排除してきた。

 金融業向けの主力商材である債権管理システムは、クレジットカード事業を手がける大手百貨店や量販店などに向けて横展開を図り、インターネット通販、CTIなどの商材を扱う事業部も金融、流通業へと盛んに売り込みをかける。

 例えば流通業の顧客と販売管理など基幹業務システムの商談が発生したとする。タイミングを見ながら債権管理システムやネット通販、CTI、ネットワークなど複数の事業部から提案を行うことで商談を膨らませていく。

 単に受注額を増やすことを狙うものではない。同業他社との競争のなかで自社商材をひとつでも多く採用してもらうためのリスク分散の役割も果たしている。販売管理や債権管理、ネット通販などの案件をすべてひとつのパッケージにしてしまうと、「商談がまとまれば大きいが、破談になれば売り上げがゼロになってしまう」からだ。

 「壁をなくせと口を酸っぱくして言っても、相乗効果が見込めなければ自ずと壁ができてしまう」と須賀井社長。連携可能な商材を意識的に増やすことで事業部間の円滑な意思疎通を図っている。

 だが、最先端の技術開発や新規顧客を開拓するスピードを既存の事業部だけで維持し続けるのは限界がある。これを補完するため昨年からM&Aに積極的に取り組んできた。中期経営計画では2008年度(09年3月期)売上高は昨年度比約1.3倍の152億円、経常利益率は12.6%の目標を掲げる。これを実現するためにもM&Aは欠かせないと判断した。

 昨年末までにネット通販事業と連携可能な2社のウェブ開発会社、今年7月には自治体向け債権管理システム大手のシンクをグループ会社化した。業務系システムを中心に手がけてきたアイティフォーにとってWEB2.0などネットの最新トレンドはどうしても弱点となる。また民間金融機関の債権管理は強くても自治体向けは経験が乏しかったため、資本提携に踏み切った。

 「既存事業で相乗効果を期待できる会社と手を組んでいく」と、少しずつ事業領域を増やしてきた。事業部やグループ会社の自主性を尊重しつつ、連携効果を出していくことで高収益モデルをつくりあげている。(安藤章司●取材/文)

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