SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>16.富士通システムソリューションズ(下)

2006/09/18 20:37

週刊BCN 2006年09月18日vol.1154掲載

苦い経験生かし、開発体制を抜本改革

開発案件チェック部門を新設

 不採算化を招きにくく利益率が高い小規模案件を集中的に獲る――。その戦略が富士通システムソリューションズ(Fsol)の高利益体質を築いてきた。ただ、そのFsolも不採算案件の発生で、高収益体質が一気に崩壊した時期がある。2004年度(05年3月期)、経常利益率は0.7%まで急落した。落ち込み幅は、前年度比8.4ポイントにもおよぶ。

 Fsolは、小規模案件を積極的に獲る営業活動を徹底する一方、数億円レベルの大型案件を戦略的に獲りにいくことがある。それが、手がけたことがない先進的なシステムであればあるほどだ。リスキーな大型案件をあえて手がけるのは、ノウハウの蓄積と開発スキルを向上させ、対応できる案件の幅を広げるためである。

 「大型案件は勉強のためとの意味合いが強く、利益が出なくてもよいぐらいの気持ちでやる」(聖五社長)。しかし、04年度、利益が出ないどころか、複数の大型プロジェクトが赤字に陥ってしまった。

 事態を重くみた社長は、この時期から開発体制を再度チェックし、不採算化を排するための抜本的改革に乗り出した。

 まず、開発スキルを全社的に向上させるため「CMMI」(ソフトウェア能力成熟度モデル指標)の取得に本腰を入れて取り組み始める。現在、特定の部門では「CMMI」のレベル4を取得、全社的にはレベル3を取得した。開発ツールの統一も図り、開発段階におけるトラブルを従来の4分の1に減らした。開発プロジェクトの進捗をチェックするためには、専門部隊「PM推進室」も設置。この部署には、プロジェクトマネジメントに長けた富士通の定年退職者も配置し、案件管理の精鋭を集め、厳しくチェックする体制を整えた。

 協力会社の絞り込みも図った。現在320社の協力会社を抱えるが、そのうち約50社を特化協力会社として選定。連携を強めることで、開発者が分散していても不採算化を招かないようにした。

 一連の開発基盤の強化で、不採算案件は劇的に減少。大規模案件の赤字化で大きな痛手を負ったものの、開発体制をより強固にした。Fsolの経常利益率は、06年3月期には6.2%まで上昇。今年度は6.8%まで回復する見込みだ。ただ、10%への到達はまだ先。社長は、コスト削減効果が出ていないオフショア開発体制の見直しや間接部門の人員を10%削減し、営業や開発などに振り向ける施策なども計画している。

 「今年度の経常利益率見込みは6.8%だが、これはあくまで社外向けの数値。社内では、プラス3%を目標にやれと発破をかけている。不採算化がなければ今年度での経常利益率2ケタ達成は十分可能」という。

 つまずきを契機に開発基盤を強化したことで、経常利益率10%確保への自信は逆に深まったようだ。(木村剛士●取材/文)
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