SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>18.日本オフィス・システム(下)

2006/10/02 20:37

週刊BCN 2006年10月02日vol.1156掲載

オンデマンド型ERPに活路

アウトソーシングで収益力アップ

 日本オフィス・システム(NOS)は収益拡大の切り札としてオンデマンド型のERPサービス「ファインクルーNX」シリーズを投入。昨年10月の発表直後から顧客企業の引き合いが急増している。今年度(2006年12月期)のファインクルーNX事業の売上目標1億3000万円に対して今年7月末時点の受注高ベースですでに1億2500万円を達成。受注が確定した企業は6グループ47社になるなど順調な滑り出しとなった。

 ERPなどの基幹業務システムは5-10年先の事業環境を見据えて設計することが多く、稼働までに時間がかかり、初期開発コストがかさむことが課題になっていた。ファインクルーNXはソフトウェアのライセンス費用を廃止。基本機能をパッケージでカバーし、顧客が利用するサービス内容に応じて月額課金するオンデマンド形態にすることで初期導入コストを大幅に抑えた。

 ITアウトソーシングをベースとしたオンデマンドサービスにはこんな逸話がある。

 国産メインフレーマーの顧客であるA社がNOSの顧客であるB社を買収した。一般的に考えれば買収したほうの情報システムに吸収されて、NOSは顧客を1社失うケースだ。しかしNOSが提示したオンデマンドサービスはA社の担当役員から高く評価され、買収後の情報システムはNOSに任せることになった。

 NOSはかねてからB社にアウトソーシングを強く働きかけており、「買収時、B社の電算室の人員は実質ゼロ人に減らしていた」(尾嵩社長)。これに対してライバルベンダーの提案は“電算室の人員が10人ほど必要となるシステム提案”を行っており、B社の実態を知ったA社は一気にNOSに傾いたという。

 ファインクルーNXもこの考え方に則ったもので“顧客の電算室を肩代わりするためのERPサービス”と位置づけた。標準的な中堅企業の月額費用は財務会計で電算室の人員0.5人分、販売管理で同1人分の人件費をベースに算出。ファインクルーNXは頻繁にバージョンアップを行っており、新規に開発した機能は別途料金を徴収せずにユーザーへ提供する。電算室が日々業務システムを改善するのと同じ役割をNOSが担う。

 複数の顧客企業の電算室機能を一手に引き受けることで1社あたりにかかるコストを削減。顧客が自前で電算室を持つよりも割安な費用を提示できるようにした。アウトソーシングを通じて顧客との距離が縮まれば、新規のIT投資を受注できる確率も高まる。ファインクルーNXのユーザーが増えてくれば共通して使えるモジュールも増え、さらにコストを削減することも可能だ。

 今年度で中期経営計画「新創」は終わるが、次の「ネクスト新創」(仮称)の最終年度(09年12月期)には売上高300億円、営業利益30億円の達成を念頭においてオンデマンドサービスを軸とした事業拡大を推し進める。(安藤章司●取材/文)
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