SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>19.コア(上)

2006/10/09 20:37

週刊BCN 2006年10月09日vol.1157掲載

予想外の不採算案件で大幅減益

PMO人員の倍増で管理を徹底

 コア(井手祥司社長)は、2006年度(07年3月期)の経常利益率を6.6%と見込んでおり、前年度と比べ0.1ポイント増の計画を立てた。しかし、第1四半期に大幅な減益。経常利益率の向上がピンチの事態に陥っている。

 第1四半期の業績は、売上高は54億5500万円(前年度同期比9.8%増)となったものの、経常利益が2700万円(同81.5%減)で、経常利益率は0.5%に落ち込んだ。利益減少の要因について井手社長は、「不採算案件を抱えたことが大きい」と語る。

 組み込みソフト開発中心の「エンベデッドソリューション事業」で不採算案件が発生した。「契約の時点で、不採算になると見抜けなかった」と打ち明ける。実際、同社の営業担当者が無理に受注した案件ではなかった。ところが、ソフト開発を進めるうちに、その顧客企業からの追加開発が増えたことから、「採算に合わないとPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)要員が判断した」という。結果的に3700万円程度の損失だった。

 ほかにも、利益減少の原因があった。電子テロップ機器メーカーのラムダシステムズを今年早々に子会社化したことによる製品研究開発費の増加で3000万円の損失が出たのだ。資産管理ソフト「アイタム」のASPサービスを今年度早々に提供する予定だったが、「サービスの本格化が大幅に遅れている」ことも影響した。さらに、「携帯電話が機器メーカーの熾烈な競争などで端境期に入りつつある。組み込みソフト開発も、利益を確保することが難しい状況になりつつある」ため、携帯電話の組み込みソフト拠点である北京コアや上海コアが赤字であることも大きなマイナス要因という。

 第1四半期が業績不振だったことから、期初に売上高を122億5000万円、経常利益を6億4000万円と見込んでいた中間期の業績予想を、7月末の時点で売上高118億5000万円、経常利益3億7000万円に下方修正した。井手社長は、「上場以来、初めて下方修正することになった。恥ずかしい限り」としている。同社にとっては正念場を迎えたわけだ。業績向上に向け、「まずは、不採算案件を受注しない体制をつくらなければならない」。その体制づくりのため、第2四半期中にPMOの人員を2倍に増やし、プロジェクト管理の強化を図った。

 売上規模拡大による利益増加策については、「下期から新規事業を立ち上げていく」計画だ。自社開発のGPSチップをベースとしたロイヤリティ事業への着手やASPサービス提供など高利益のビジネスモデル構築に力を注ぐ。

 中間期予想は下方修正したものの、通期業績については期初に発表した売上高256億円(前年度比12.1%増)、経常利益16億8000万円(同13.6%増)を変更しなかった。「事業領域の拡大により、通年計画は必ず達成できる」と踏んでいるからだ。(佐相彰彦●取材/文)
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