SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>31.東芝ソリューション(下)

2007/01/08 20:37

週刊BCN 2007年01月08日vol.1169掲載

アカウント営業を倍増

成功例の横展開を推進

 東芝ソリューションは上位顧客の基盤強化を図る。大手顧客などに密着して営業を行うアカウント営業の対象を2009年度(10年3月期)をめどに倍増させる。現在は上位約100社の顧客を中心にアカウント営業を行っているが、これを200社程度に増やす。

 拡大に当たってはアカウント営業の成功例、失敗例を検証し、「どう対応すれば、どういう結果になるのか」(梶川茂司社長)のケーススタディを徹底。成功例は積極的に他の顧客へ横展開する。1顧客あたりの受注額が増えれば新たなアカウント営業の対象企業としてより緊密な関係の構築に努める。

 大手顧客は東芝ソリューションが主に担い、年商100-500億円の中堅顧客は06年5月に設立したグループ会社の東芝ソリューション販売首都圏がメインとなって深掘りする。大手から中堅までの顧客基盤を厚くすることで事業拡大を目指す。今年度の連結売上高は3012億円の見込みだが、09年度は300億円近くを上乗せして3300億円を目指す。経営計画の実現には、中堅から大手顧客まで幅広く受注を増やすことが欠かせない。

 業種別では製造業と流通業に力を入れる。売上高に占める製造・流通の比率は半数強と高いが、このなかには東芝グループからの受注が少なからず含まれる。「開拓すべき余地はまだ十分にある」と東芝グループ以外の顧客の深掘りや新規開拓を積極的に進めていく。

 東芝グループで培ったITノウハウは他の大手製造グループにも応用がきく。製造業を中心に景気回復基調にある中部と関西地域のテコ入れも行う。

 課題が多いのは流通業。トップグループの大手流通チェーンは、大手メインフレーマに基幹業務システムを押さえられ、やすやすとは入り込めない。「将来的には当社システムによる置き換えを目指すが、当面は成長過程にある鉄道会社系のストアなど新興グループの基幹システムを確実に受注していく」と、流通業における実績を着実に積み上げることで、より大規模な基幹システムの受注に結びつける考えだ。

 受注案件を増やすと同時に不採算プロジェクトの発生防止にも神経を尖らす。中期経営計画では経常利益率5%以上を必達目標としており、プロジェクトの不採算化は利益を直撃しかねない。見積もりの段階から採算性を厳しくチェックするプロジェクト管理の強化を通じて、今年度は不採算案件を前年度比で半減できる見通し。来年度は「数億円まで減らす」目標を掲げる。

 顧客基盤の拡大は他社との競合激化を招く。これまで客先での主な競合はNECや富士通などメーカーが多かったが、シェア拡大を進めることによって、独立系の大手SIerとの新たな競合は増える可能性がある。業種やエリアの深掘り、開発コストの低減などを進めることで競争力を高めていく方針だ。
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