SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>39.大和コンピューター(下)

2007/03/05 20:37

週刊BCN 2007年03月05日vol.1177掲載

沖縄、ベトナムに活路

独自商材の開発にも注力

 大和コンピューターの利益率は業界水準を大きく上回る。だがエンジニア1人あたりの作業量は限られているため、今の社員数約200人の体制では伸ばせる売り上げの限界は自ずと決まってくる。かといって、人員増はコストに跳ね返るだけに慎重な舵取りが必要だ。

 売上拡大の施策のひとつとして開発子会社を沖縄に集約。国内オフショア開発の拠点と位置づけて人員を拡充している。地元での採用を中心に15人ほどに増やした。今は本体から発注した開発案件がメインだが、将来的には広くアジアへ展開する前線基地としての役割を担わせることを検討する。「自主独立の気概が強い県民性を生かした展開」(中村憲司社長)を視野に入れる。

 今年1月にはベトナムの首都ハノイと南部のホーチミンでソフト開発の成熟度を評価するCMMIの講習会を開いた。ベトナムで「どうビジネスを展開するかはまだ調査中」と言葉を濁すが、ソフト開発の品質向上やコスト削減、リスク管理に威力を発揮するCMMIのセミナーを通じて現地の有力な協力会社を発掘する狙いがあることは容易に想像できる。CMMIをベースとしたスキルアップに熱心なソフト開発ベンダーならば、同社が求める品質や納期に応えられる可能性が高いからだ。

 今、ソフト開発業界では堅調なIT需要を取り込むため、人材の争奪戦が激しさを増している。大手SIerは資本力を武器に国内外での人材調達にしのぎを削っており、中国やベトナムで100人単位の人材調達を行う動きもある。規模だけで競争すれば「大手に太刀打ちできない」(中村社長)のが現状だ。CMMIをベースに品質やプロジェクト管理を徹底する同社の強みを生かすことで事業拡大を図る。

 これまで住商情報システムや大塚商会といった大手SIerのソフト開発を受注してきた。昨年度(2006年7月期)連結売上高のうち大口顧客上位2社向けの構成比率が約64%を占める。安定顧客との関係を引き続き強めるとともに、一方で独自のアプリケーションパッケージの開発にも力を入れる。ソフト開発で得た技術を応用してユニットウェア「Pt-Station(プラチナステーション)」などを製品化。大口顧客のビジネスとの競合を避けながら自社の強みを生かせる市場開拓を急ぐ方針だ。

 受注環境が良好な今のタイミングで、「社内にある技術の棚卸しをする」と改めて自社の強みの洗い出しをすすめる。人員を確保することで大口顧客からの発注に対応できる開発パワーを生み出す。同時に自社の得意領域を伸ばし、独自のパッケージソフトを収益の柱に育ていくことで持続的な成長を目指す。(安藤章司●取材/文)
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