IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>2.千代田漬物編(下)

2007/05/28 16:18

週刊BCN 2007年05月28日vol.1188掲載

ITベンダーの営業工数1/4に削減

 千葉市中央卸売市場内にある千代田漬物の朝は早い。毎朝6時には「得意先」を巡回する営業担当者らが、意見を交換する朝礼を開始。「私の担当分の浅漬が残っています」--。浅漬の賞味期限は1週間。仕入れて早期に出荷しなければ、期限切れが迫り、店頭価格を下げざるを得なくなる。最悪は廃棄になる。以前は、担当者の勘に頼り、相互に在庫情報を共有化し、協力して在庫をさばくムードはなかった。

 2005年3月に始動した現業メンバーによるIT構築プロジェクトチーム「改革円陣隊(通称・改円隊)」は月2回、担当ITコーディネータ(ITC)の鬼澤健八氏を招き、担当者の勘に頼る“属人的”な体質を見直すべく議論した。「現状の業務フロー図」を作成、その図に基づき顧客のニーズやコアコンピタンスなどを書き加える。

 改円隊の会議は当初、「自分の業務を明らかにすることに抵抗があった」とチームリーダーの柿澤好徹部長。しかし、議論を重ねるうちに拒否反応が減った。ITCの鬼澤氏は「IT化のための打ち合わせではない」と、徹底指導したことが奏功した。

 全社員の手で業務プロセスを見直し、1年弱で業務手順と担当者を明確化できた。「仕様を変更せず、市販パッケージに合わせられることが確認できた」(鬼澤氏)と、最小限のIT投資で新システムの仕様を作成した。新システムの導入前には、鬼澤氏がRFP(提案依頼書)を作成。7社コンペで、同社の「2代目」システムを構築した実績のある内田洋行の販売ディーラー、ウチダユニコム(東京・新宿区)が受注した。

 新システムは、同社の受発注や売上請求、仕入れ、在庫を管理する統合型基幹業務パッケージ「Step─Ⅱ/EX」、会計・給与計算システムが応研の「大臣シリーズ」、千葉店と成田店を一元管理できる「ターミナルサーバー」のほか、富士通製のパソコン、サーバーなど。初期投資は保守費を除き、約1000万円に収まっている。

 「将来の拡張性を保証できている点」(鬼澤氏)がポイントだった。システム稼働から1年以内にグループウェアを入れ、ウェブマーケティングや電子商取引などの追加を念頭におく。

 システムを導入したウチダユニコム千葉支店の田中良夫・営業課次長は「受注競争に勝つのは大変だった。しかし、ITCが間に入ったことによって、営業工数は4分の1、SE工数(機器指導含む)は2分の1に低減できた」と振り返る。ITベンダー側の粗利拡大にも結びついたようだ。

 業績は、システム変更前に比べ売上高が1億円増、粗利益率が1%アップした。通常業務は一般社員主導になり、「今は、地産品を生かしたプライベート商品の開発に目を向けている」(柿澤利行社長)と、新たな戦略へ闘志を傾けるまでに心境が変化した。(谷畑良胤●取材/文)
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