IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>9.幸田商店編(上)

2007/07/16 16:18

週刊BCN 2007年07月16日vol.1195掲載

「干し芋」作りにIT生かす

 サツマイモ栽培の北限である茨城県ひたちなか市に、「干し芋」生産・販売で国内トップシェアを誇る食品加工会社、幸田(こうた)商店がある。本社のある畑作地域には、提携する農家や自社栽培の芋などを原料に、洗浄、蒸し、乾燥、箱詰め、出荷までを内製化して一貫生産ができる「干し芋」工場や豆、麦、きな粉を原料とする食品加工工場、自動倉庫などが点在。この7年間で売上高が約2倍に膨れ上がった成長著しい企業だ。

 2代目の鬼澤宏幸社長は、さらなる事業発展を図るため、ITシステムや工場などへの新規投資について「やる時に思い切ってやる」と、手を緩めない。生産力で勝る大手加工食品会社と対等に戦い、卸やスーパーなどに商品を流通させるには「多品種少量生産が欠かせない」(鬼澤社長)。同社には、地場産の農作物に付加価値を加えたオリジナリティ豊かな商品アイテム、主力の干し芋「べっ甲ほしいも」や「黒ごまきな粉」など18種類もの商品がある。リードタイムの短縮や在庫の回転率アップを図るには、生産から物流までを一貫化するITシステムの充実が必要だった。

 中国・青島にも合弁会社の「干し芋」工場がある。ただ、こちらは、一般流通向け商品を安定供給するための工場という位置づけ。「茨城の土壌と気候に合った、感動を与えるこだわりの商品作りには、日本の生産体制を整えるべき」(鬼澤社長)と、2005年にダイフクの自動物流倉庫(400パレット)を新設。従来利用してきたオービックビジネスコンサルタントの販売管理システム「商奉行」を最新版のERPに切り替え、倉庫とデータ連動させた。

 在庫の回転率向上には、この仕組みが奏功。余剰在庫を3-4割減らすことができ、現在では倉庫回転率を月平均8回まで向上させた。受注から出庫まで、大幅な時間短縮ができたことが、収益を大幅に拡大し得た要因といえる。

 いまも続くITシステムのリニューアルやパワーアップなどの支援に、同社顧問として現在在籍するITコーディネータ(ITC)、葛貫壮四郎氏(IT-DOCTOR CORPORATION社長)とは、鬼澤社長が04年に茨城県中小企業振興公社の「派遣事業」紹介されてからの仲である。「将来陳腐化するシステムは入れたくない」と、専門家のITC活用に踏み切った。

 04年の段階では、鬼澤社長の頭に、先の自動物流倉庫や、きな粉を使った商品「幸ちゃんの黒ごまきな粉」などを生産するため今年3月にオープンした「きな粉加工工場」設置--などの計画がすでにあった。しかし、「既存システムとどう連携させるべきか、ITをどのように経営に生かすかなどで専門家の手を借りる必要があった」(鬼澤社長)という。

 同社は商品流通でオンライン販売(楽天)にも参入。約1万人の個人ユーザーが登録。「クレームを含めた意見が瞬時に寄せられる。これにすぐ対応しなければ、こだわり商品はできない」(鬼澤社長)。畑作地域に事務所や工場が点在する難題を解決し、社員のコミュニケーションを活発化、連絡の迅速化にはITの活用が必須だった。(谷畑良胤●取材/文)
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