次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>21.野村総合研究所(上)

2007/09/03 20:40

週刊BCN 2007年09月03日vol.1201掲載

投資対効果の説得に苦慮

野村総合研究所(NRI、藤沼彰久社長)は、検索窓にキーワードを入力すると、関連した単語が検索結果に表示される「連想検索エンジン」を開発した。今年度中に事業化するほか、NRIの公式ホームページにも組み込んでいく予定だ。

 当初はブログ記事を恋愛や政治などカテゴリ別に自動分類する独自開発エンジンを使って、漠然と何かができるのではないかと考えていた。「サーチやeコマースを使っていて思ったことだが、検索で商品名や情報が一致しないと目的の商品や情報が出てこない場合が多い」(米国NRIパシフィックの平野耕一・Principal Engineer)。そのため、キーワード入力の際に単語を工夫するなどチューニングしていく必要があった。「すでにグーグルなどからウェブ2.0関連のサービスが出ていたし、自分たちも手がけてみたいと考えた」のがきっかけだ。

 自然言語処理を駆使した連想検索エンジンの開発に着手したのは2006年4月から。新しい技術を開発、評価する情報技術本部のなかで、まずは3人で開発をスタート。その後、自然言語処理技術の根幹に長けた人材をプロジェクトチームに組み込んでいった。

 連想検索エンジンは、開発しながら顧客や開発者からのフィードバックを受けることで、迅速に対応できる「アジャイル開発」の手法を採用した。開発体制は日本と海外。このため、早朝ミーティングで意思の疎通を図った。時差はあるが、それが苦になることはなかったようだ。

 連想辞書については「さほど時間をかけずに開発できた」が、実際に連想辞書を活用したアプリケーションを探求している時が、いちばん苦労したようだ。情報技術本部技術調査部の岡田智靖氏は「ビジネスの現場に、どのような価値あるアプリケーションを提供するかが難しい部分だった」と振り返る。結局、応用部分を固めるよりも、まずは連想辞書を顧客にサービスとして提供することを優先、使い方は顧客と検討していくことで落ち着いた。

 3か月に1度は社内審査が開かれ進捗状況と今後の計画を報告する。「技術開発は順調に進展していたが、次のステージで必要となる要素開発を各事業部に説明するのに手間取った」(情報技術本部技術調査部の大島修副主任)という。開発費の予算取りで、投資に見合った効果が見込めるのか。説得はしづらかったが何とか理解を得て、今年4月に事業化が認められた。(鍋島蓉子●取材/文)
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