四国地域では、新しいビジネスに着手する動きが活発化している。なかでも、メジャーな地場企業とパートナーシップを組むケースが目立っており、徳島県では全国区のジャストシステムを中心にビジネス拡大を図る中堅・中小ベンダーが多いようだ。しかも、大手とのアライアンスなどを通じて構築されたネットワークを利用し、新しいビジネスを創出するケースも出ている。一方、オフコンベースのビジネスを手がけていたディーラーもビジネスの柱を増やすことに力を注いでいる。(佐相彰彦●取材/文)

新ビジネス着手の動きが活発化
地場間パートナーシップが進む

■ジャストシステムの力が強大 “徳島発”から全国区へ


 四国地域のなかで、全国的に知名度があるソフトメーカーといえば、真っ先にジャストシステムがあげられる。1979年の創業から徳島県に本社を構えて全国区にまでのしあがったことから、県内では一目置かれている存在。地場のSIer各社は、ジャストシステムとのパートナーシップでビジネス拡大を図る傾向が高まっている。

photo 日本IBMの出資比率が高いものの、徳島新聞社や阿波銀行、大塚製薬工場など複数の地元企業も出資する四国システム開発は、自社開発のデータベースにジャストシステムのナレッジ検索エンジン「Concept BaseV」を組み込むことで新聞社向け統合データベースの販売を開始。稲村茂雄・営業部長は、「これまではSIが中心だったが、今回の開発で自社ブランド製品の知名度を一段と高めていく」としている。同データベースのユーザー企業として、すでに徳島新聞社と大分合同新聞社の2社を獲得。発売後1年間で5社への導入を見込んでいる。将来的には、「全国に拡販していきたい」考えを示す。

 地元に貢献しているという点で、官公庁も徳島経済の活性化に不可欠であることを認めている。徳島県商工労働部地域経済課の飯田啓介課長補佐は、「地域に根付いた創業という点では有名企業の1社。経済発展のためにも活性化活動の協力体制を敷いている」と話す。徳島県とジャストシステムは05年から地元の人材育成を共同で推進してきた経緯がある。飯田課長補佐は地元企業の創業支援を担当している。そこで、徳島県は昨年9月から中小企業のICT化支援に向けた電子商取引推進事業をジャストシステムと共同で実施。財団法人とくしま産業振興機構が進めるeラーニング講座や人材育成、創業支援にジャストシステムが協力している。

 こうしたパートナーシップは、ジャストシステムにとってもメリットが大きい。徳島県を中心に法人ビジネスを担当する高田克久・法人ビジネス部企画課主任は、「地域ビジネスを手がけていくためには、フェイス・トゥー・フェイスが重要となる。徳島県で多くのアライアンスが組めるのは本社を置いていることが大きい」とみる。ほかにも、同社では地場の大学病院と医療システムの共同開発を進めているという。全国区ではあるものの、徳島県にも根付いていることで「首都圏だけでは味わえないビジネスが展開できる」(高田主任)としている。

■中小連合で柱を増やす SaaSで事業領域の拡大も

 徳島県の中小ソフトハウスでは、ジャストシステムから受託する開発案件が大きな比重を占める。県下のソフトハウス経営者は、ほとんどがジャストシステム出身の技術者。その1社であるエイペックスでは、「受託とはいえ、取引先から言われたものだけを開発しているわけではない。なかには共同開発もある」(宮田正順・代表取締役)という。下請け構造というよりは、プロジェクト案件を獲得しているケースが多いため、「技術者のクォリティ向上の面でもメリットがある」としている。

 ただ、ジャストシステムの業績が厳しい状況であることから、エイペックスでは「ここ数年、業績は横ばい」(宮田代表取締役)と認める。そのため、新しいビジネスの創造を模索。技術者の質が高まっている強みを生かして、「第三者検証サービス事業に着手する」ことに踏み切った。このサービスは、ソフト開発プロジェクト全体を開発パートナー企業とともにマネジメントするというもの。納品前には、開発事業者からのテスト仕様書に基づいた動作確認や、任意に画面を操作することによる動作確認を行う。納品後には、開発が完了したソフトに対して実際のオペレーションを想定して検証試験を実施する。

 新しいビジネスを手がけるにあたり、複数のソフトハウスによる共同出資で「日本品質管理」という会社を設立した。参加企業は、アイ・ディ・エス、エイペックス、デジタルインテリジェンス、ビザンコム、テクノモバイルの5社。社長は、デジタルインテリジェンスの岩田和幸社長が兼務している。共同出資会社の設立は、「徳島県のソフトハウスの連携を強化するため」とエイペックスの宮田代表取締役はアピールする。また、参加企業として名乗りを上げたアイ・ディ・エスの貴田秀資・代表取締役も「受託先とのパートナーシップが深まるだけでなく、新しい取引先を開拓できる可能性が高い。ビジネスチャンスが広がる」としている。

 一方、ジャストシステムとの関係がそれほど深くないベンダーも、ビジネスモデルの転換を模索している。富士コンピュータサービスでは、統合業務ソフトでCATV向けビジネスが順調だが、「安定したビジネスの柱を増やす」(久米政雄社長)ことに力を注ぐ。その1つとして、「SaaSを切り口にビジネス領域を広げていきたい」との考えを示している。日本IBM系ディーラーのスタンシステムも、「ディーラーとして製品販売を既存ビジネスとして継続していくことに加え、SaaS関連ビジネスへの着手も検討している」(近藤紳一郎社長)という。

 中堅・中小SIerによる、大手ベンダーとのアライアンスや大手ベンダーのネットワークを生かした新しいビジネスモデルの創出、ビジネス領域の拡大は、現状のままでは業績拡大が難しいことを物語っている。