次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>42.サイボウズ(下)

2008/02/11 20:40

週刊BCN 2008年02月11日vol.1222掲載

アクセスをリアルタイムに集計

 サイボウズ(青野慶久社長)のグループ会社はサイボウズ・ラボ(畑慎也社長)は、サイボウズの研究開発部門として2005年に設立された。立ち上げ当初は2人だったが、現在は約10人の従業員で運営している。エンジニアは個々に開発したいアイデアを見つけると自然発生的に取り組み始め、その後、他のエンジニアが加わってプロジェクトは大きくなっていく。

 エンジニアに共通する思いは、「ユーザーに便利に使ってもらいたい」ということだ。そんな現場発想で生まれたのが、昨年8月にリリースされたサービスである。ページのアクセス統計をリアルタイムに分析し、サイトトラッキングやランキングにするサービス「Pathtraq(パストラック)」だ。ユーザーにツールをインストールしてもらい、そのツールからアクセスログを収集する。苦労したのは「送られてくる大量のデータをできるだけリアルタイムに集計結果に反映すること」(開発者の奥一穂氏)だったという。

 一般的に、ネット視聴率を手がける業者が情報を提供する場合、有料となる。だが、パストラックはユーザーには無償でできるだけ多くのデータを出していきたいとしている。ユーザー層については男女比など、統計データに偏りが出てしまっているのは課題だが、奥氏は「メディア的にはアンテナが高い。企業向けでもマーケティングの参考として役立つだろう」とみている。今後の動きについては、「見せ方しだい。例えば、データの取り方など、切り口を変えることで新たなサービスとして展開することができる」と同社では構想を語る。

 会社の自由度が高いなかで新しいものを生み出すのは、かえって難しいそうだ。アイデアが枯渇することもあるのかと尋ねると、「そこまで深刻な状況に陥ったことはない」と畑社長は苦笑いする。「ネット上で情報収集をしているし、もともとやりたいことが明確な人間を採用しているため、アイデアの枯渇に困ったことはこれまでなかった」。ただ、R&D、プロダクト開発には、向き、不向きがある。向いている分野で人材を伸ばしているのだという。

 中長期的な会社の将来像については、「まだそんなことは考えていない。ある日突然グループの収益があがったとしたら、研究開発投資にも違いが出てくるだろう。5年先なんていうと想像もつかない。ただ、1年1年、一歩ずつ進んでいければいい」と考えている。(鍋島蓉子●取材/文)
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