工程管理ツールを開発

プラントのノウハウ活用


 石油や化学工場開発など世界各地でプラントを手がけるエンジニアリング大手の日揮。同社は日本IBM製ミドルウェア「WebSphere」をプラットフォームとしたプロジェクト・工程管理ツール「e工程マネージャー」を新規事業分野のITビジネス部門で開発した。プラント分野では大手ながら、IT市場では後発。そのハンディを補う策として、プロジェクト・工程管理に着目した理由は何か。そこには、エンジニアリング会社らしい異色の取り組みがなされていた。

 2000年、日揮は生産・物流系システム開発を中心としたSIビジネスに参入した。主力事業のプラント分野では当時、ユーザー企業のニーズに変化が現れていた。工場の設計・建設だけでなく、さまざまな機器を制御管理する情報システム開発も求められるようになったのだ。日揮はそうしたニーズへの対応を続けるうちに、自社にもSIのノウハウが蓄積されてきたことに着目する。プラントの「付属」として手がけてきたSIを独り立ちさせてもビジネス展開できるはず──。それがIT事業に乗り出した理由だった。

 プラント分野では、厳格なプロジェクト管理が求められ、それが競争力の源泉になっている。日揮も工程管理ノウハウを強みのひとつとして企業規模を拡大させてきた部分がある。それだけに、たとえSI事業でも工程管理に対する意識は高かった。

 「社内には当然ながらプロジェクトマネジメント(PM)システムはある。ただ、それは大規模でスパンが長いプラント開発向け。短納期で売上規模も小さく、管理する項目もプラントとは異なるSI業には使いにくかった」と佐藤知一・第2プロジェクト本部担当部長は当時を振り返る。プラント開発では一般的に、プロジェクトに関連する全コストの8割以上を機材費・外注費が占めるという。人件費が主体のSI業とは確かにコスト構造が異なっており、この事業向けには適さないと判断したのも無理はない。

 SI業に適した工程管理システムを調査したが見あたらず、そこで出した結論が自社開発だった。自前で開発すれば自社に最適な形で工程管理できる。それに加えて、自社開発を選んだ理由がもうひとつある。開発したソフトを自社利用だけでなく、パッケージとしても販売しようと考えたのだ。

 日揮は、エンジニアリング業界では大手でもIT市場では実績が乏しい。差別化要素がなければ、成長するのは難しいと思われた。他のITベンダーにない強みである工程管理のノウハウが詰まった自社プロダクトを商材としたいという思惑があった。工程管理は、プラント開発やSI業のほかに、建設業でもどの業種でも利用対象になる汎用性が高い領域。このプロダクトを工程管理が必要なあらゆる業種・業態に販売しようというわけだ。

 当初は自社リソースでの開発を検討するものの、結果的にはITベンダーとの協業を決め、ソフトブレーンを協業先として選んだ。その理由は、同社の営業支援ツール「eセールスマネージャー」のファーストコンタクトから受注までのプロセスを管理するエンジンが、プロジェクト工程管理にも適用できると判断したからだ。自社導入と外販に向けて、日本IBMのパートナーでもあるソフトブレーンとの二人三脚での開発がスタートした。(木村剛士●取材/文)