リアルとサイバー融合で旅館をPR

 福島県の会津柳津町で30年以上旅館業を営む花ホテル滝のや。同町を訪れる観光客は減少し、建物は築20年以上で老朽化している。座して観光客を獲得できる環境では決してない。だが、滝のやはITを有効活用して、その逆風を跳ね返している。

 ほぼ毎日更新するホームページや、漫画の題材になった旅館の女将、塩田美紀さんの「女将ブログ」などオリジナルコンテンツを支配人の塩田恵介氏が自主制作。日々情報発信して全国にPRする。SNSも活用し、宿泊客や地元民とインターネット上のコミュニティを作り、発信だけでなく要望も吸い上げている。ITコーディネータ(ITC)の山口康雄氏(フクジンコンサルタンツ代表取締役)の協力で、SEO(サーチエンジンン最適化)にも取り組む。そうした取り組みが実を結んで、今では宿泊客の約7割はインターネット経由。クチコミや地元観光協会からの紹介が大半だった状況をITで一変させ、宿泊客を増加させた。

 その滝のやの最もユニークな取り組みが、「花ホテル講演会」と題したイベントだ。地元民や宿泊客を対象とした1時間ほどの講演会を、1か月に3-4回開催している。

 講師はプロが務めるわけではない。塩田支配人の知人や友人、なかには宿泊客にお願いすることもある。テーマもさまざまで経済や金融、娯楽、教育、ITなど。すでに約140回も開催している。講演会スケジュールや過去の内容をホームページやメルマガ、ブログ、SNSとあらゆる情報発信ツールで紹介し、聴講者を募っているのだ。講演会は有料制だが、毎回20-30人ほどが参加し、多い時には50人程度が集まる。

 ただ、素人講師が務める地方の小さな講演会は、それだけでは影響力が小さい。塩田支配人は、ここでもITを使う。「STICKAM(スティッカム)」と呼ばれる映像ライブ配信の無料オンラインツールを使い、講演内容をインターネット上に生放送しているのだ。過去の講演内容も同ツール上に保存しいつでも観られるようにした。「スティッカム」には、生放送中の映像についてチャットできる機能もあり、講演会を視聴しているアクセスユーザーがテーマについて議論し、質問もする。講演会後半には、ネットから寄せられた質問に対して講師が回答する。

 「スティッカム」の視聴者は毎回100人、多い会では500人もの人が参加するという。

 講演会というリアルなイベントを、インターネットというサイバーな場で横展開。こうして滝のやの名前をネットで増殖させ、PRに活用している。