視点

ITベンダーよ、コスト削減策を示せ

2009/01/19 16:41

週刊BCN 2009年01月19日vol.1268掲載

 調査会社「IDC Japan」が1月8日に示した「2009年国内IT市場展望」がIT業界関係者に衝撃を与えている。「厳しい1年」であることはどの業界も一緒。「ITはコスト削減や業務効率化に欠かせない」と、せめて前年並みの「ゼロベース」で推移することを願う業界経営者は少なくない。しかし、同調査は国内IT市場は「マイナス1.7%」と予測。ITベンダーはさらなる「構造改革」が不可欠となる。

 「週刊BCN」でたびたび報道している通り、ユーザー企業のITシステムは「所有から利用」へと変貌しつつある。この波は、ユーザー企業へ確実に押し寄せている。同社調査によると、証券会社リーマン・ブラザーズ破綻前には、IT予算増額を予定する企業が20%あった。だが、破綻後は3%に急減している。これを見る限り、よほど「費用対効果」が短期的に見える投資以外は、「ビタ一文出さない」と言いたげである。


 この傾向は「流通=売り手」の多くを占めるハードウェア販売会社を主軸にするITベンダーに甚大な影響を及ぼす。ハードは低価格化が進み、ますます収益を生みにくい商売になるだけでなく、いままで「預かって」いたハードが統合され「仮想化環境」へ移行しつつあることで「保守ストック」自体の目減りも加速する。ストレージに至っては、データセンターなどで処理集中化が進んでしまう。


 ある企業のサーバーを複数のメーカーが保守していたとする。ユーザー企業側には、日本企業の平均でIT投資の6割以上を占める運用コストを引き締めるため、1社に集約する機運が生まれる。「ミニマムに導入し徐々にアドオンでき、数年後に大きなリターンがある」システム提案でなければ「受注」に至らないだろう。販売事業が成り立たず「撤退を選択するベンダー」が出てくる可能性を否定できない。


 多くのITベンダーには、自らのコスト削減や構造改革を進めながら、09年は「守り抜く」という姿勢が目につく。だが、2010年以降に「何を売って儲けるのか」との問いに解がなければ、金融機関から継続的な融資を受けられず資金繰りに詰まることになる。ITベンダーに告ぐ。ユーザー企業に「コスト削減策とコンプライアンス対策」「オンデマンド型システム」を提案せよ。前者は喫緊の対策であり、後者は次の年度の収入源につながるだろう。


 「所有から利用」へ進展したことで、「手離れの良い」商材は売れにくく、ITベンダーの「総合力」が問われる。厳しいなかでもこの視点をもった変革へ社内の頭脳を傾けることが重要になる。

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