IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>98.「IT経営力大賞」シリーズ スーパーホテル(中)

2009/07/06 16:40

週刊BCN 2009年07月06日vol.1291掲載

稼働率集計をリアルタイム化

 北は北海道・北見から南は沖縄・石垣島まで全国89店舗を展開し、2010年度(2011年3月期)までに100店舗の開設を狙う宿泊特化型ホテルチェーン「スーパーホテル」。同ホテルでは、スローガンを複数掲げており、徹底したIT利活用によりそれらを実現しようとしている。その目標の一つが、「日本一のバジェット型(宿泊特化型)ホテル」だ。

 ホテル開業時からITでホテル革命を起こすことを命題にし、全店舗に自動チェックイン機「ノーキー・ノーチェックアウト」システムを先駆的に導入した。旅館業法上、各店舗には最低でも支配人と副支配人の2人を配置しているが、実際には従業員を置く必要がないほど、効率化されている。他ホテルに比べれば従業員が少なく、「人件費は他のホテルに比べて3割少ないだろう」と、創業者の山本梁介会長はITの効果を語る。

 ただ、ホテルに詰める従業員が少ないと、宿泊客への対応が円滑にいかない懸念がある。そこは一部(200床以上の店舗)を除く全店舗の顧客情報を東京のデータセンターで一元管理・情報共有したことで、例えば、チェックイン時の「ひと声掛け運動」などを実施して補っている。

 「スーパーホテル」の宿泊客はリピーターが多い。「場所をわざと駅から若干遠い立地にして土地代を抑え、駅前に比べ騒音の少ない所で安眠を提供する」(山本会長)と、合理的な出店戦略を語る。出張が多いビジネスパーソンは、気に入れば一つの全国系列の店舗を選んで利用する。そうした際に「先月は○○店をご利用いただきありがとうございました」と、別の店舗に宿泊した客に声を掛けたり、角部屋希望や枕へのこだわりなどの過去情報を基に、チェックイン時に先回りして提案している。

 3年ほど前から同ホテルを支援するITコーディネータ(ITC)の本多茂氏(NPO法人WIT代表)の役目は、「次なるIT戦略の指南」。本多ITCは「ITの原型はすでにある。あとはどう進化させ、不備な点を改善するかだ。残るはITベンダーから出る仕様書をチェックすること」と、自らの役目が長期化することを予測し、身を引き締める。

 本多ITCが着任して取り組んでいることの一つが、稼働率をリアルタイムで集計することだ。それまでは各店舗がExcelで1日の稼働率を計算し、本部へ同ファイルをメールし、それを本部側の自社用にカスタマイズした「Access」に集計。さらにこれをCSVに吐き出し、オービックビジネスコンサルタント(OBC)の業務システム「勘定奉行」で仕訳していた。この経路の「Acess」部分をなくし、各店舗データを直接「奉行」にリアルタイム集計し、同期できるようにした。

 「スーパーホテル」IT戦略室の板垣邦直・課長代理はこう言う。「本部主導で考えると、現場が抱える問題を見失う。本多さんのおかげで、使う立場でITを進化することができている」。(つづく)
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