視点

双方向になるHDMI

2009/07/13 16:41

週刊BCN 2009年07月13日vol.1292掲載

 HDMIはデジタルAV機器をつなぐデファクトなインタフェースになった。もともとパソコンと液晶モニタを結ぶデジタル配線としてのDVIを、AV機器用に使いやすく再編成したもので、5年前にスタートして以来、急速に普及した。

 HDMIの問題は単一方向ということだった。DVDプレーヤーとテレビを結ぶことがそもそもの眼目であり、当時は、一方向のインタフェースで何の問題もなかった。しかし、ホームネットワークの中でHDMIを使いたいという声が上がるのは必至として、バージョン1.4では、双方向機能を採用するに至った。手段としては、内部のケーブルの一部をイーサネットケーブルとして使用するのである。


 ここから生まれるメリットは、まずインターネット接続だ。現在、AV機器はネット接続のためのイーサネット端子を持っているが、その接続が大幅に簡略化される。これまでは、それぞれが個別にイーサネットでネットに接続していた。これからは、インターネットの信号はまずテレビに入り、テレビをハブとしてBDプレーヤーやAVアンプなどにHDMIラインを経由して送られる。ホームネットワークもHDMI経由で構築可能になった。デファクトになりつつある制御用のDLNAはこれまでイーサネットケーブルが必須であった。今後はHDMI1.4ケーブルでDLNAのコマンドが実行できる。


 二番目がHDMIを経由した記録が可能になったことだ。1.4ではテレビから信号をHDMI経由でBDレコーダーに記録できる。かつてシャープが「録画できるBDプレーヤー」でテレビとプレーヤーをi・LINKで結んだが、同じようなことが可能になる。すると、またテレビをハブにして2台のレコーダーを結び、再生機器に保存してあるカムコーダー撮影映像を、もう片方の記録機器にダビングすることも考えられる。


 HDMIの進化話は、ひとつの寓話を形づくっている。一方向のインタフェースは必ず双方向へ向かうということだ。はじめは単に便利に「結ぶ」だけだったのが、使っているうちに、これで双方向のやり取りができるともっと便利になるのに…と、誰もが思い始め、その方向に進む。実はワイヤレスでのHD伝送がこれから盛んになるが、それも次のステップは双方向だ。現在はチューナーから、壁掛けテレビに一方向でハイビジョン信号を送るだけだが、すでに次世代のターゲットを双方向に置き、研究開発が進んでいる。ものみな双方向になるのである。

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