解剖!メーカー流通網

<解剖!メーカー流通網>37.TKC ライバルSIerの協力取り付ける 自治体向けSaaS/ASPシェア急増へ

2009/10/29 20:45

週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載

 TKCは、SaaS/ASP方式で提供する自治体向けの「地方税電子申告支援サービス」の利用団体数が、年内に累計670余りに増える見通しを示した。同サービスは、地方税電子化協議会が運営する地方税ポータルサイト「eLTAX(エルタックス)」と自治体をつなぐ仕組み。サービス開始から2年弱でユーザー数を大幅に増やした。地方税の申告を電子化する国の政策の後押しに加え、TKCが全国の自治体向けITビジネスに強いSIerの販売協力を取りつけたことが成功要因として挙げられる。

 販売パートナーに加わったSIerは、インテックや内田洋行、両毛システムズなど、公共分野でTKCと激しくぶつかり合うライバルだ。2008年10月の時点では12社だったが、直近では43社まで増えた。こうした有力SIerに、自らのサービスの代理販売をしてもらうことで、シェア拡大に弾みをつけた。

 地方税申告の電子化は、「とにかく早く、安く実現する」(角一幸副社長)という国の強い方針が打ち出されていた。TKCのSaaS/ASP方式は、一つのシステムリソースを共有することで価格を大幅に抑えており、個別に開発するよりも早くて安いのが売りだ。時間が限られていることから、ライバルのSIerはすでに開発が完了しているTKCのSaaS/ASP方式を採用したほうが“得策”と判断した側面がある。

 地方公共団体や会計事務所をメインターゲットとするTKCが、同業のSIerと幅広いパートナーシップを組むのは、極めて珍しいケース。角副社長は、「ライバル関係にあるSIerのトップとは、さすがに面識がなかった」と打ち明ける。初めのうちはコンピューターメーカーなど“共通の知人”を介したり、業界のつてをたどったりしながら面会の予約を取った。実際に会ってみても、「“TKCは何を企んでいるのか”と、相手方に疑いの表情がチラリと浮かんだり…」と、苦労の連続。だが、電子申告が納税者にもたらす利便性の高さや自治体の電子化の必要性を説いて、協力を仰いだ。(安藤章司)

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