SMBのシステム改革はこの手で! 活躍する「企業内ITC」の素顔

<活躍する「企業内ITC」の素顔>NECネクサソリューションズ(上) 社内ITCの増強で提案力強化

2010/07/01 20:29

週刊BCN 2010年06月28日vol.1339掲載

持田敏之
コンサルティング部長
 NECネクサソリューションズ(NECネクサ、森川年一社長)は2007年度、渕上岩雄社長(当時)が音頭を取り、ITコーディネータ(ITC)資格保有者の増強に着手した。これまで、年商100億円以上の中堅企業で、製造業や流通業などを中心に事例を重ねてきた。

 07年時点では、社内に44人の資格保有者がいたが、多くは個人による取得にとどまっていた。持田敏之・コンサルティング部長は、「ITCといえば、システムエンジニア(SE)のなかでも向上心をもつ人が多かった」と評価している。

 「NECというブランドがあるからシステム構築を依頼してきたが、提案という面では全然なっていない」。かつては、こんな厳しい声がユーザーからあがっていたと、持田・コンサルティング部長は当時を振り返る。従来は、システム構成図にスペックが詳細に書いてある分厚い提案書をユーザーに提示していた。ユーザーが抱える経営課題の解決という視点が欠けたITシステムの構築に終始していたのだ。これはNECネクサも同様に抱えていた問題だった。

 NECネクサが社内ITCを増強してきた狙いは、ユーザーとの間の意識ギャップを埋めることと、信頼の置けるパートナーとして「響く提案」を行うことにある。資格取得の奨励に際し、まずは営業部門と幹部クラス(事業部長クラス)から挑戦させた。持田・コンサルティング部長は、「資格それ自体が目的ではなく、実際に営業の活動に落ちていかないといけない」と説明する。

 08年上期時点で、資格保有者が77人となり、前年下期から33名増加。内訳は、コンサルタントと営業、SEがそれぞれ人員数でほぼ並ぶ構成で、現在まで同じだ。その後、順調に人員数を伸ばし、154人にのぼる大所帯にまでなっている。

 社内ITCの活動促進に向けて、三つのプログラムを用意してきた。(1)試験対策の実施や申請関連手続きのヘルプデスク設置といった形で、資格取得まで支援するITCチャレンジプログラム(2)資格保有者が中心となり、組織横断的に提案レポートや営業スタイルの変革などに着手するITC活用プログラム(3)社内外の資格保有者とのネットワーク構築と情報共有による継続的なスキルアップを図るITC-SIG(Special Interest Group)――。

 ITC活用プログラムの一例を挙げると、ユーザー向けレポートの作成とITCによるレビュー実施がある。ユーザーの経営課題を認識し、経営戦略とIT戦略の整合性を模索。これにITCのプロセスガイドライン(PGL)を活用した。社内ITCは、社内横断チームを組織してレポートのレビューを実施した。こうした活動を経て、NECネクサに対しユーザーから好意的な意見が寄せられ始めた。「今までと違うね。こういう取り組みはありがたい」「経営トップも含めて話し合おう」「課題の再確認ができた」などなど。同プログラムの効果を実感している。

 なお、(1)(2)はすでにプログラムを終了。「(社内ITC)154人は適当な人員数だと考えている」(持田・コンサルティング部長)。現在、同社の社内ITC増強計画は質重視への転換期を迎えている。
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