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<きまぐれクラウド観察記 第1回>クラウド・サービスの流通モデルは難しい――SaaSパートナーズ協会 専務理事 松田利夫

2010/09/22 16:04

 今日からしばらくの間、いわゆる「クラウド・コンピューティング」の動向について、日頃観察していて気がついたことや、情報産業側の立場から見た私的クラウドを週2、3回のペースで紹介する。

 クラウド技術動向や市場動向に関する最新情報については、業界紙のライターの方々にお任せするとして、情報企業経営者あるいはソフトウェア技術研究者の視点から、クラウドという“バズワード”をからめて業界内で起きていること、論じられていることについて、私的解釈や展望をつづってみる。その時々にその時の気分で思いついたことを思いつくままにつづるので、時系列的、論理的に順序立った内容にはならない可能性があるので、あらかじめご理解下さい。

 まず初めに、私のクラウド観を簡単にまとめる。ソフトウェア技術研究者としての私にとって、「クラウド」とは単に「インターネット」を意味するにすぎない。そして、「クラウド・コンピューティング」は、サン・マイクロシステムズ創業者のスコット・マクネリー氏による提言「The network is the computer」の延長上にある概念と理解している。

 これに対して、情報企業経営者としての私にとって、「クラウド」とは、「インターネット」を通じて提供されるIaaS、PaaS、SaaSと呼ばれるサービス・モデルの総称であり、それら「クラウド・サービス」を市場へ提供するための技術的かつビジネス的基盤を含めた概念としてとらえている。

 技術的観点からの「クラウド・コンピューティング」は、さらなる技術的進歩が期待されるものの、既存の技術を使って実現されているわけだから、その意味での「クラウド」はかなり明確なものといえる。しかし、「クラウド・コンピューティング」を技術的に理解し、実装できたとしても、それを「クラウド・サービス」として市場に提供するには、これまでのハードウェアやソフトウェアの流通モデルとは大きく異なる新たなサービス流通モデルを構築し、それをクラウド上に実装するというビジネス的観点が必要になる。

 実際、「クラウド」をビジネス機会としてとらえ、理解しようと試みるとき、誰もが直面する問題は、その技術的難しさよりも、新たなサービス流通モデルを構築し、そこに、それぞれの事業機会を見い出すことの難しさにあるといってよいでしょう。

・次回に続く

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BCN Bizline編集部
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