IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>30.ユニオン精密(下) 社員の意見を「絵にする」

2011/06/02 16:04

週刊BCN 2011年05月30日vol.1384掲載

 2009年に、神奈川県と鹿児島県の工場で新しい生産管理システムの本格稼働を開始した精密ネジメーカーのユニオン精密。雨森和彦社長は、「システム設計のベンダーとの契約を結んだのが(08年の)3月だったので、期末を迎えたベンダーからさまざまな特典を得ることができた」と笑顔を見せる。

 ユニオン精密は、新しい生産管理システムを導入する前に、社員が現場に足を運ばなければ、生産の進捗状況や材料の在庫状況などが把握できず、工場内の業務フローが非効率という課題を抱えていた。ITコーディネータ(ITC)の河出孝司氏は、新しいシステムでは、「物のありかがよく分かるようにしたい」という雨森社長の要望を受け、ITを駆使して工場内の業務フローを見える化することに力を注いだ。

 新システムは、業務フローの見える化だけでなく、社員の負担を減らしたり、生産効率を向上させたりする機能を多く盛り込んでいる。雨森社長は、「新しいシステムは、受注データをもとに、生産に必要な材料の量を品種ごとに計算してくれる。例えば、1万個のネジにこの品種なら5kgが必要とか、材料の量がリアルタイムで分かるようになった」とシステムのメリットを語る。

 河出ITCは、ユニオン精密の生産管理システムを構築するにあたっての自分の役割を、「業務フローをどう改善するかは現場の人しか分からないので、社員全員の意見をまとめたり、絵にしたりすることが私の仕事だった」と話す。システムを構築するうえで、とくに知恵を絞る必要があったのが、何の品目をどのように製造したかを表示する現品票のフォーマットを定めることだった。「現品票は、すべての工程で使うものなので、全工程のニーズに応じたフォーマットを決めるのは、なかなか大変だった」と振り返る。

 ユニオン精密は、今後の成長に向けて、他のメーカーではできない特殊な製品を作ることで国内市場を深掘りすることに加え、日系企業を対象にした海外展開に注力していく方針だ。河出ITCは、「これから、営業支援ツールが必要と考えている。もう少したってから、実現していきたい」と、今後の計画を語った。(ゼンフ ミシャ)

現場に行かなくても、生産の進捗状況が分かる
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