入れ歯などの歯科技工物を受注製作している協和デンタル・ラボラトリー(木村健二社長)は、千葉県の「サービス産業生産性向上モデル事業」に応募し、補助金事業に採択されたものの、十分な成果を出せずに悩んでいた。補助金の辞退を千葉県に申し出たことをきっかけに出会えたのが鬼澤健八・ITコーディネータ(ITC)だった。
補助金事業の期限が迫っていたため、鬼澤ITCは実現したいことの再確認や業務プロセスの整理を進めつつ、いくつかの工程計画のパッケージソフトを同社に提示した。そのなかから、パラメータ設定の幅が広いことに加え、スタンドアロンで安価である点を評価した富士通四国システムズの「PRO PLASURM」を選定することとなった。
従業員がパッケージソフトの機能を理解することによって、「PRO PLASURM」を自力で自社向けにフィットさせて導入した。工程計画は、柔軟に運用できるようにガントチャートに自動割り付けさせた後、リーダーがマウスで操作して微調整する2段階方式にした。工程パターンを作成するにあたっては、1個づくりである製品の作業工程を分析し、多種の製品工程を類似化することで、作業工程の見える化を行った。
急ぎの割り込み案件があっても2段階の半自動化で計画立案の業務を50%削減できたほか、受注残の作業状況を1週間先まで把握できるようになった。その結果、予定外の残業を減らしたり、作業手順を登録した工程マスター自体を製作ノウハウとして蓄積したりすることができた。工程マスターには標準時間を設定し、歯科技工士別の生産性を評価することが可能となった。木村社長は、「システムの導入効果とは断言できないが、時間単価は5%程度向上している」と話す。
プロジェクトを推進したのは、歯科技工士の上鵜瀬美奈氏と、ITの知識に明るい浅野真吾氏を中心とする社内メンバーだった。鬼澤ITCは、両氏が主導した「製造工程の類似化と標準時間の設定がプロジェクトの肝だ」と指摘する。メンバーの一人、松井元生氏は、「現場がアナログ指向で、ITに振り回されている感覚をもっていた。最初はなかなか理解してもらえず、繰り返し説明して受け入れてもらえるようになった」と、満足げに振り返る。(信澤健太)

歯科技工物の製作現場