7月以降、電力供給が大幅に不足し、停電発生の危険性が首都圏よりも高くなっている関西地区。関西のユーザー企業はここにきて、データのバックアップなどの災害対策を急ピッチで進めるようになった。メーカー系ITベンダーは、事業継続計画(BCP)やディザスタリカバリ(DR)の需要拡大を受けて、BCP/DR対策を提案書に入れている。中期的には、ハウスメーカーなどに向け、「エコ」をキーワードとした事業展開が可能性を増す見込みだ。
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日本IBM広域事業部 関西支社関西営業部 西澤敏部長 |
関西地区での電力事情の悪化が、メーカー系ITベンダーのビジネスにつながり始めている。製造や卸、小売といった業種に向けたサーバー/ストレージ展開を事業の主軸としている日本IBM広域事業部関西支社は、「BCP/DR関連の案件が7月以前と比べて、20~30%増のペースで増えている」(関西営業部の西澤敏部長)と、需要の活発化に手応えを感じている。また、NECの佐藤洋一関西支社長は、「関西のユーザー企業のBCPの動きはこのところ、急速に高まっている」として、こちらも厳しい電力事情が事業の追い風となっているようだ。佐藤支社長は、BCPにとどまらず、ビルのエネルギー管理の効率化に関してもニーズが増大していることを受けて、省エネソリューションの展開に力を入れている。
日本IBM関西支社の西澤部長は、BCP/DRを切り口とした提案活動を強めるべく、地域パートナーとの連携を強化している。「最近、販売パートナーに、提案書に複数のパターンでBCP/DRソリューションを入れていただいている。パートナーに『ついでにBCP/DRもできる』とユーザー企業に訴求してもらい、それによって、当社のストレージやサーバーの販売拡大を狙う」と戦略を語る。日本IBMは全国で中堅・中小企業(SMB)の市場開拓に取り組んでおり、関西地区でもSMB向けビジネスの拡大を推進している。「今後、滋賀・奈良・和歌山の3県を中心に、都市部ではない市場の開拓に注力する。データバックアップなどができる低価格のクラウド型サービスを商材に、SMBのお客様を増やしていく」(西澤部長)という。
関西地区は電力供給不足がしばらく続くと予測される。ITベンダーは、中期的には「エコ」をキーワードにしたソリューションの需要が高まると見込んでいる。関西地区には積水ハウスなど大手のハウスメーカーがひしめいており、彼らに向けて、家庭内の電力使用量を可視化するソリューションの展開が有望株となりそうだ。富士通関西システムズの白山健一社長は、「エコを含め、新規事業の開拓に注力する」という。(ゼンフ ミシャ)