IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>69.原田左官工業所(下) ITで左官業のイメージを覆す

2012/03/15 16:04

週刊BCN 2012年03月12日vol.1423掲載

 タイルの湿式工事などを手がけ、女性職人の積極的な採用などで異彩を放つ原田左官工業所(原田宗亮社長)。市場環境が厳しさを増すなかで、自社のIT基盤の構築を進めてきた。

 原田社長は、2003年頃、データベースソフトの「Microsoft Access」を使って、工事原価管理システムを構築した。これによって、「Microsoft Excel」での原価計算や人工(にんく)計算を、正確に行うことができるようになった。具体的には、40人の職人や協力パートナーを含む大量の工事現場の業務と材料などをそれぞれ原価管理することで、売り上げと利益の管理が可能となったのだ。

 職人と多数の現場を管理するためには、メールやネオジャパンのグループウェア「desknet's」などが導入効果を発揮。とくに、高齢の職人でも使用できる携帯電話が有効なツールとなっている。職人に対して、翌日の作業場への案内メールを午後3時に配信する業務フローを設定し、全員が携帯電話で確認できるようにしている。

 これまでのように、夕方に本社に帰社してから翌日のスケジュールを確認する必要はなくなった。原田社長は、「メールの一括送信によって、現場作業の進捗管理が容易になった」と説明する。

 ホームページのリニューアルに取りかかったのは2006年頃だった。外部の事業者に頼らず、自社で構築して運用している。その成果は如実に現れており、内装業者や住宅メーカー、個人リフォーム顧客から月あたり5件ほどの問い合わせが来るようになった。特殊左官工事の引き合いで、1件800万円程度の大型受注を獲得できたことも売り上げの増大につながった。

 同社のIT支援に携わった阿部満ITコーディネータ(ITC)と原田社長の出会いは、若手経営者向けのIT経営研修だった。阿部ITCは、「原田左官工業所は、しっかり原価管理ができていて、これまでの左官業のイメージとは異なっていた。業務に合わせてシステムをつくり、差異化を図っている」と評価する。IT導入では、IT経営研修で策定した戦略企画書をもとに、主にホームページのレイアウトやデザインについてアドバイスを行ったという。(信澤健太)

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