クラウド・コンピューティングの普及は、SIビジネスに従事してきた既存のITベンダーに構造改革を迫っている。難しい選択を迫られているITベンダーとは対照的なのが、創業間もないITベンチャーだ。クラウドがビジネス推進の追い風となり、IT企業のスタートアップ(起業)ブームが再来している。近年のスタートアップ企業の特徴は、最初からグローバル展開を見据えてクラウドサービスを開発していること。およそ10年前、2000年頃のベンチャーブーム期に創業し、成長を続けるITベンチャーもクラウド×グローバルに照準を定めた。IT業界に巻き起こる新たな潮流を追う。

 クラウドサービスは、ハードウェアやミドルウェアの販売にはじまり、インストール作業、運用といったITベンダーにとって利益が期待できる部分をごっそり抜き取ってしまった。従来の受託開発は単価が下落し、工数をかけずに短期間でのシステム納入が求められるようになっている。

 一方で、スタートアップ企業の多くは、既成のクラウド基盤を活用し、低コスト・短期間でウェブサービスを開発。多額の資金と人員を開発・販売活動に投じる必要がなくなり、資本力に勝る大手ITベンダーとはひと味違うサービスが続々と登場している。

 クラウド基盤を用意するセールスフォース・ドットコムやアマゾン、マイクロソフトなどの大手ITベンダーは、スタートアップ企業を取り込んだエコシステムの拡大に精を出している。無料キャンペーンなどの特別支援や出資などに乗り出した。外資勢には、こうした動きが顕著にみられる。

 2000年頃に巻き起こったITベンチャーに対する投資ブームとは一線を画している。クラウド基盤上で、すぐに新しいサービスを開発できるので、ビジネスプランを売るという行為は受け入れられなくなった。ベンチャーキャピタルであるサンブリッジのアレン・マイナー会長兼CEOは、「とにかくサービスをつくってリリースすることが大事」と話す。

 起業当初から日本国内にとどまらないと宣言するスタートアップ企業は多い。グローバル展開を狙う企業の1社にキャスタリアがある。インターネットを利用した教育・学習ツールの開発や販売などを手がける。インターネット上にある大学などの講義動画・音声を使って学習できる基盤「iUniv(アイユニブ)」が同社の主力商材だ。

 この連載では、ITベンチャーを取り巻く環境の変化から新しいビジネスモデル、既存のITベンダーの選択までを紹介していく。(信澤健太)