視点

端末ビジネスの厳しさを再認識

2013/05/23 16:41

週刊BCN 2013年05月20日vol.1481掲載

 富士通の2012年度(13年3月期)決算発表会見で、端末ビジネスの厳しさが改めて浮き彫りになった。

 同社の12年度業績は、半導体事業の不振が主因で最終赤字に転落した。会見の焦点は、当然ながらその半導体ビジネスの再建策で、決算内容とともに、半導体事業の再建プランを発表した。従業員の早期退職優遇制度の実行と、子会社が手がけるアナログ・マイコン事業を米スパンションに譲渡する計画を明かした。会場に集まった記者の質問も、ほとんどが半導体事業についてだった。しかし、私がこの会見で注目したのは、半導体事業の売却額や早期退職優遇制度の応募者数といった内容ではなく、富士通が考える半導体事業の方向性でもない。数分を費やして説明されたパソコンと携帯電話の出荷台数である。

 富士通のパソコンと携帯電話の12年度出荷台数実績は、パソコンが11年度に比べて19万台少ない583万台で、携帯電話は150万台減少の650万台。そして、13年度の見通しは、パソコンが12年度比48万台減の535万台で、携帯電話は同130万台減の520万台とした。理由は競争の激化。パソコンの12年度事業は「赤字」(加藤和彦・取締役執行役員専務)に陥った。

 パソコンは「Windows XP」のサポート切れがほぼ1年後に迫っていて今年度は特需が見込めるし、携帯電話はスマートフォンがヒットしている。表向きは、市場環境は悪くないはずだ。にもかかわらず、台数がここまで落ちることを想定していることに驚いた。富士通のパソコンと携帯電話は、海外では存在感がないが、国内シェアはパソコンでは2位(12年、MM総研)、携帯電話でも2位(12年、IDC Japan)。そのメーカーが、ここまでの減少計画を立てるとなれば、「明るい未来を展望できるマーケットなのか」と疑わざるを得ない。会見の席で、加藤専務はパソコンと携帯電話の事業セグメント「ユビキタスソリューション」について、「ビジネスとして成り立ちにくい」とコメントして、厳しい環境にあることを隠さない。

 IT産業の主役は、ハードではなく、ソフトとサービスだといわれて久しい。だが、ユーザーがITリソースに触れるための端末は、いつの時代でも必要なはず。それでも、ブランド力と知名度がある高水準なシェアのメーカーが、大幅な減少計画を立てなければならないという現実──。改めて、たとえ特需の要素があったとしても、メーカーが多くて成熟した市場においては販売を伸ばすことがいかに困難であるかを実感させられる。
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