サードウェーブは、世界3位のサーバーメーカーである中国の浪潮集団(INSPUR、インスパーグループ)と日本国内認定代理店契約を結び、5月22日からサーバー5機種の販売を開始した。高性能と高いコストパフォーマンスをあわせ持つInspur製品を、需要拡大が見込まれるAI・深層学習(ディープラーニング)、映像・CGコンテンツ製作、仮想化・組み込みなどの分野の顧客に向けて販売していく。協業の背景と製品の強み、具体的な販売戦略について、サードウェーブの高橋良介・上席執行役員とインスパージャパンの王遠耀・代表取締役による対談を通じて語ってもらった。

「BAT」のAI戦略を支える
InspurのAIサーバー

--まずは、Inspurについて教えてください。

 Inspurは1945年に設立し、インフラ系事業からスタートしました。90年代にPCやサーバー事業を手掛けて大きく成長するとともに、中国IT産業の発展を主導してきました。現在では、世界100カ国以上に進出し、26カ国に支社・現地法人を展開しているグローバル企業グループです。事業の7割をサーバーが占めており、その92%が中国での売り上げです。ガートナーによるグローバルシェア調査では、サーバー製品出荷総額で世界シェア第3位となっていますが、19年第3四半期のシェアは11.7%で、2位のHPEに0.7ポイント差まで迫っています。われわれは、今年度に2位になることを目指しています。
 
インスパージャパン 王 遠耀 代表取締役

--サーバー事業では、AI分野に強みを持つと聞いています。

 特に強みを発揮しているのがAIサーバーです。AIサーバーとは、膨大なデータを処理するための高性能や大容量を備えるだけでなく、低消費電力など人工知能の開発・運用に最適な要件をそろえた製品をいいます。中国のAIサーバー市場は急拡大(2019年は前年比57.9%増の約23億3000万ドル)していますが、中国のAIをリードする3大インターネット企業BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)およびJingDong(ジンドン)が導入しているAIサーバーの5割近くをInspurが占めています。また、中国国内の有力ベンチャーとも広く協業をしています。

長年のパートナーシップ
で培った信頼と安心

--今回、サードウェーブと認定代理店契約を結びましたが、その背景を教えてください。

 実は、正式に代理店契約を発表したのは5月のことですが、私個人としてサードウェーブとは先代の創業社長の時代から20年以上の付き合いがあります。05年に会社を引き継がれた尾崎健介・現社長ともすでに15年の長い付き合いで、お互いを知り尽くしているということがありました。昨年から日本市場への本格参入に向けた戦略についても相談しており、正式な発表のタイミングを見計らっていたというのが本当のところです。

高橋 私自身、Inspurの中国本社や生産現場も視察しましたが、一目ですごいメーカーであると実感しました。生産体制についてはかなり自動化が進んでいるだけでなく、しっかりつくり込まれていると思いました。サードウェーブ自身がPCやサーバーの国内メーカーとして、品質に対して強いこだわりを持っていますが、その視点から評価しても、水準の高さを感じました。また機能面では、われわれが得意とする映像やグラフィックス分野でハイエンドのニーズをカバーできるラインアップが補完できるとともに、高度な技術力を持つInspurの存在は非常に頼もしく感じます。
 
サードウェーブ 高橋良介 上席執行役員 法人営業統括本部 統括本部長

--日本では他社とも代理店契約を結んでいますが、サードウェーブの魅力は。

 長年にわたって法人向けコンピューター、サーバー製品の製造・販売での実績と豊富な経験を持つことです。特に、AIに不可欠なGPUサーバーに強みがあり、実際、多くのユーザーを獲得しています。高橋さんが触れたように、Inspur製品がハイエンド、サードウェーブの製品がエントリーからミッドレンジというように補完関係になれます。また、サードウェーブは独立系であり、ニュートラルな立場で販売ができます。加えて、昔からの個人的な強いパートナーシップがあることも大きな安心材料です。

No.1のAIサーバーの地位を確立
ゲームや文教がターゲット

--国内市場に向けた販売についてはどのように考えられていますか。

高橋 高性能とコストパフォーマンスをあわせ持つInspur製品は、高い競争力を持つと確信しています。今回、販売を開始した5機種の中には、AIクラウドコンピューティングや深層学習に適したNVIDIAのGPUソフトウェアハブ「NGCReady」認定済製品もあり、高い拡張性を備えているほか、2000W・2200Wの電源を搭載し冗長化したモデルがそろいます。そのInspurとの協業をベースに、今後、国内でも需要拡大が見込まれる用途をターゲットに販売していく方針です。

 名実ともに、「No.1のAIサーバー企業」としての地位を確立することをキャッチフレーズに展開していきます。現状の日本市場は、世界の先端からするとAI分野で後れを取っていると思います。それだけにAIサーバーの潜在的なニーズは非常に大きいと思います。現在、日本での事業は約20億円ですが、今年には日本法人を設立して、3年後の22年3月期には日本のマーケットで売上高100億円を目指す。その時のInspurグループの売上高は2兆円以上の規模で、世界トップになることを目指します。

--具体的な販売戦略は。

 コロナ禍の影響前に元々、見込んでいたのは五輪需要に関連した5G関連への投資への対応でした。しかし、状況が大きく変わり、今考えているのは次の3点です。まずは、インターネット企業。大手検索エンジン、チャット系、ECサイト運営会社など積極的なAI投資を行っているので、そこに食い込むことができれば、大きな需要が見込める。2点目は、ストリーミング。コロナ禍の影響から、映像のストリーミング需要が急増しています。その映像配信などのサービスを提供している企業に向けた販売を考えています。3点目はゲーム。これもコロナ禍の影響に絡むものですが、在宅での仕事や学習など、自宅で過ごす時間が長くなり、空き時間にネットゲームに没頭する人が大きく増えました。そのネットゲーム企業の設備投資の需要を狙います。

高橋 やはり当社が強いゲーム系企業や文教分野が、大きなターゲットになると考えています。また、大学、研究機関におけるハイパフォーマンスマシン(HPC)需要にもしっかりと応えていきます。AIは大学や研究機関が中心と思われていますが、民需も高まっています。そこに向けて、導入や活用が容易にできるよう、ソフトウェアやネットワーク製品を組み合わせたアプライアンスモデルなどを提供していく方針です。

--サポートも重視されているそうですが。

 Inspurのサーバー製品は、販売して終わりではありません。私たちは日本市場にしっかり根を下ろしたビジネスを展開していきます。それが何よりも信頼につながると考えています。その点、サードウェーブはアフターサービスにも定評があるパートナーです。

高橋 Inspurからは技術や構成情報を逐次、提供してもらっています。また、製品に関するオンラインでの勉強会も開催しており、当社からすでに多くの者が参加しました。われわれも事前検証をしっかり行った上で製品を提供していきます。

 コロナ禍の影響で、当初の予定より遅れていますが、近く、テクニカルサポートセンターの開設を予定しています。センターには中国本社からエキスパートを呼び寄せて、常駐させます。

--最後に、国内市場に向けたメッセージを。

 優れた製品、安心のサポート、バリューの提供を通じて、パートナーの方々とともに成長していきたいと思います。

高橋 現在、当社は法人ビジネスの拡大に注力していますが、その戦略において、Inspur製品は非常に有力な商材となるものと大いに期待しています。