視点

次世代送電網の実現を急げ

2013/08/08 16:41

週刊BCN 2013年08月05日vol.1492掲載

 経済産業省から発表された2013年2月末での産業用太陽光発電(発電容量10kW以上)の設備認定は1100万kWとなり、わずか8か月間で既存の原子力発電の約2基分の発電電力量を太陽光発電で供給できるという結果になった。

 このうち、約15%にあたる156万kWは北海道での申請だったが、北海道電力は4月に2000kW以上の大規模太陽光発電所の4分の1しか受け入れができないことを発表した。そしてこの7月には、道北地域など一部の地域で中小規模の太陽光発電所でも受け入れができないことが追加で発表された。

 これは、北海道電力の送電網インフラの容量に限界があって、緊急に大型蓄電池設備を設置したとしても、4万kWの追加受入れにしかならないということを意味する。

 北海道電力以外でも、送電網インフラのぜい弱性から太陽光発電の系統連系における接続拒否の事例が報告されており、大規模集中発電を前提に構築された送電網インフラが、分散型発電に十分対応できていない事実が明らかになった。

 いま世界の動向は、米国で提唱された次世代送電網「スマートグリッド」で、自律分散的な制御、電力網内での需給バランスの最適化、事故や過負荷などに対する抗堪性、コストの最小化の方向に向いている。国内でも、2年前からスマートシティの実証実験が各地で行われていたり、電力会社のスマートメーター導入の計画が発表されたりと、同様の方向に向いているように思われる。しかし、スマートグリッドに対応した送電網インフラの整備計画や規制緩和に関しては、いまだ課題として残されており、欧米に比べて遅れ気味であることは否めない。

 この課題を解決するためにも、前国会で廃案となった電気事業法改正案を秋の臨時国会で成立させるべきである。

 そして、計画されている「電力小売りの全面自由化」や「発送電分離」を計画通り具現化することによって、初めてスマートグリッドに必要な最先端の技術を国内で発展させ、さまざまなニーズに対応できる最先端のインフラを構築することができると私は考えている。

 将来、スマートグリッドの分野で、日本は最先端の技術・製品を世界に提供できるよう推進を図るべきだ。IT分野で経験した「ガラパゴス」にならないように、政策を進めていく必要があるからだ。
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